2020年度 槍ヶ岳強化合宿

1.対象:北アルプス 中崎尾根経由-槍ヶ岳

2.日程:2021年2月5日~2月10日

3.参加メンバー:小野(4年CL)、浅川(5年)、真道(3年)、小池(2年)、田中(2年)

4.概要:

2月5日
13:50バスタ新宿集合〜19:00平湯着〜20:00新穂高温泉着
バスタ新宿に直接集合し、高山行きのバスに乗車する。時間通りに平湯に到着し、バスを乗り換えた後、新穂高温泉に向かう。登山指導センターは夜中も開放されており暖房も効いており、快適な室内で就寝した。

 

 

2月6日
気温:-8℃ 天気:快晴 前日の積雪:0cm
5:00起床〜5:45出発〜6:00デポ地点〜6:20再出発〜7:35穂高平着〜8:55白出沢出合い〜13:00滝谷避難小屋〜14:30槍平着
 

2月6日天気図
新穂高温泉を出発with35kgガッシャー

5時に起床し、準備を整える。前回の春山合宿の経験からデポは人目につきにくい林道で行うこととし、すべての荷物を持って出発した。林道を500mほど歩き、目についた砂防ダムにて装備をデポする。その際にスキーを装着し、穂高平に移動した。林道にはトレースがくっきりと刻まれており、快適な歩行であった。穂高平で休憩の後、白出沢出合いまで同様に移動する。白出沢出合いから滝谷避難小屋までは打って変わって、樹林帯の中の移動となった。スキーのトレースも数多く付いているため、スキーを履いたまま移動したが、重荷を背負っての障害物中の移動は困難を極めた。途中スノーシューに履き替える者もあり、その方がかえって迅速に移動できていた。快晴で気温がかなり高かったこともあり、途中のチビ谷、ブドウ谷では雪崩を警戒し間隔を開けて通過する。結局、滝谷避難小屋まで4時間弱を要してしまった。滝谷避難小屋からはスキーが快適に使える斜面となり、素早く槍平まで移動した。槍平冬季小屋の裏にテントを張りスキーなどをデポした後就寝。

2月7日
気温:-15℃ 天気:快晴のち雪 前日の積雪:0cm
4:15起床〜6:00出発〜8:50中崎尾根稜上〜9:30幕営地〜10:30設営

2月7日天気図
槍平→中崎尾根 トレースなき尾根をラッセル

4時15分に起床し、6:00にテン場を発つ。目的地である中崎尾根がくっきり見えており、尾根に問題なく取り付く。小池、田中は本格的なラッセルは初めてであったが、先頭を交代しながらどんどん高度を上げていく。ここ直近で積雪はなく雪も落ち着いていたため、平均して膝上程度のラッセルであった。尾根に取り付いてから3時間弱で中崎尾根の稜上に到着した。中崎尾根上はトレースが付いていたため、休憩した後トレースに沿って移動した。20分ほど歩くと、今朝まで使われていたであろう、木に囲まれた整地済みの幕営地を見つけたため、ありがたく居抜きで使わせてもらう。テント二張に合わせ少し面積を拡張した後、設営を完了する。設営後から風が強く吹き始め、午後にはかなりの雪を伴った吹雪となった。就寝までに2回ほどテントラッセルを行った。

2月8日
気温:-16℃ 天気:雪 前日の積雪:50cm
4:00 起床〜6:00待機〜停滞

2月8日天気図
キャンプ


 いったん4時に起床したが、依然外では雪と風が吹いている。朝食を済ませた後、テントラッセルをしながら日の出まで待機することとする。日の出を待ち、周囲の状況を確認するが雪で視界が悪く積雪も50cmほどあった。前日の天気図では西高東低の気圧配置がきまっており、1日天気が回復する見込みが無いことから停滞を決定する。午後に中崎尾根上のラッセルを予定していたが、夜にかけてさらに積雪があることからラッセルは行わず就寝する。

2月9日
気温:-18℃ 天気:曇り 前日の積雪:20cm
4:15起床〜5:30出発〜7:20千丈乗越〜8:50槍ヶ岳山荘〜9:10発〜9:30山頂着〜10:50槍ヶ岳山荘着〜11:15発〜12:00千丈乗越〜13:10テント場着

2月9日 9時天気図
2月9日 15時天気図


 4:15に起床し、朝食をとる。テント外に積もった雪は前日より少なく、すでに雪はやんでおり、風も弱まっていた。午後から晴れとの予報もあったためアタック可能と判断した。5:30に出発し中崎尾根上を、膝下程度のラッセルを交代しながら進んでいく。千丈乗越に突き上げるジャンクションは右側のルンゼから巻き、西鎌尾根上に到達した。ルンゼの半分は雪が付きラッセルが必要であったが、上半分は雪がなくここでも例年に比べ雪不足が目立っていた。

千丈乗越への登り

千丈乗越に上がると風が一段強くなった。千丈乗越の風を避けられる岩陰で手短に休憩を取り、ストック赤旗などをデポした上でアイゼンに履き替えた。休憩後、夏道をたどりながら槍ヶ岳を目指した。アイスバーンになっている箇所などは皆無であり、最後の急斜面でも、1やわらかい積雪の下には石が動く状態で存在していた。小池を先頭に、槍ヶ岳山荘南側の斜面から槍ヶ岳の肩に到着する。槍ヶ岳の肩に上がった途端、風が急激に強くなった。風を避けるため、槍ヶ岳山荘の冬季小屋に入り使わせていただいた。20分ほど休憩をとった後、わかんなど不要なものをデポし、アタックに向かった。槍の穂先のコンディションとしては、所々積雪が見られたものの、凍結はなく鎖なども容易に発見できた。風の影響を除くと夏道と同様のコンディションで登ることができた。山頂には30分ほどで到着し素早く写真撮影を済ませたが、この時点から風と雪がさらに強く吹き始めた。山頂からは50mロープを2本連結し、懸垂下降で下山することとした。

風の中での懸垂は大変

風の影響下で、長距離の懸垂下降を行ったことで全員が懸垂下降を行うのに時間を要してしまう。また、設置の梯子に直接ロープをセットしており、回収が難しくなりそうなことから、最後に残った小野は懸垂ではなく通常の梯子を降りて下山することとなった。素早く安全に下山するための懸垂下降であるが、懸垂の距離が長すぎたことと、懸垂のセットが甘かったことから時間がかかってしまった。次回からは複数回に分けて短い懸垂を行っていくものとしたい。槍の肩へ下山後は、再び冬季小屋に入り、休憩をとった。槍の肩からの下山は一段と風が強くなった。午後にかけて天候が改善されるどころか、厳しくなっていたように感じる。ゴーグルも穂先へのアタックの際に凍結してしまっている者が多く、吹き付ける雪混じりの風の中ゴーグルを外して下山することになった。雪混じりの風でホワイト・アウトする事もあったため、西鎌尾根を外れないように注意しながら、夏道沿いに下山する。千丈乗越でデポ品を回収し、アイゼンのまま雪深くなる地点まで下る。わかんに履き替え、行きのトレースを辿りながらテン場へ向かった。高度を下げた中山尾根上でも行きより風が強くなっており、トレースが消えている箇所も多かった。13時にはテン場に到着し、この日の行動を終了する。就寝前には積雪自体は朝から変化がなく、風も弱まっていた。

2月10日
気温:-15℃ 天気:快晴のち晴れ 前日の積雪:10cm
3:45起床〜5:30発〜6:40槍平小屋〜8:10滝谷避難小屋着〜10:20白出沢出合い〜11:15 穂高平着〜12:15 新穂高ロープウェイ着

2月10日天気図


 起床すると空は晴れ渡り星がよく見えた。行きと同じ尾根上を下る。わかんでの歩きにも慣れてきており、時間をかけることなく槍平小屋に到着した。スキーを回収し、滑降できる傾斜が着く場所まで移動した。休憩を兼ねスキーを滑るものはスキーに履き替え、滝谷に向けて移動した。浅川、小池ははじめからスノーシューで下降し、田中は途中から再度わかんに履き替え下降した。結果として、スノーシューで移動した者が最も早く下山することができていた。重荷を背負っている場合、スノーシューが最も汎用性が高く、使いやすいのではないかと感じた。行きの教訓から滝谷避難小屋で全員がスノーシューもしくはわかんに履き替え、樹林帯を通過することとした。スキーを背負って移動したため木に引っかかってしまう場面もあったが、履いて移動するよりはるかに素早く移動できた。白出沢出合いからしばらく林道をわかんで歩いたものの途中からスキーに履き替える。トレースが付いていた事もあり、こちらはスキーの方が快適であった。出合いから2時間で新穂高温泉まで下山することができた。

総括
 個々の技術を組み合わせ、スキー歩行から懸垂下降までを統合し問題なく実施する力が問われる合宿であった。厳冬期に長距離を移動し、目的のピークに立つことができたという経験は何よりも自信につながったと感じる。生活技術や体力などに大きな問題はなく、上級生を主体とする合宿として及第点に達することができたのではないだろうか。また、どの部員も経験したことがない山域での行動であったことからも、判断力が試される山行であった。その点、状況に適した装備の選択や気象予報に基づいた行動判断などにおいて経験不足であったことは否めない。技術はもちろん全ての基礎となるものであるが、実際の経験が何事にも代えがたい部の資産であると改めて実感した。コロナ禍で伸ばすことができた技術を活かしながら、部に足りていない実際の山行経験を最大限積めるように、今年度いっぱい活動を行っていきたい。


文責 小野