2021年度 冬山合宿

対象:北アルプス 白馬八方尾根 唐松岳
日程:2021年12月23日~29日
メンバー:真道(CL、4年)、 田代(4年)、小池(3年)、田中(3年)、壬生(1年)、岩波(1年)、鎌形(1年)

12/23
11:00部室集合〜14:00 出発〜14:30バスタ新宿〜15:05 バスタ新宿発〜20:15 白馬町BT〜20:30 白馬駅〜21:30 就寝

中山監督に出発前の集合写真を撮っていただいた

大学は冬休みを迎える中、我々は冬山での闘いに備え準備を進める。荷物は前回の合宿に比べて格段に増えた。総重量は岩波、壬生が35kg、鎌形が30kgになるように配分した。腹ごしらえの後、出発前に中山監督が見送りに来てくださり、お土産も頂く。一同気合を注入し、いざ出発。バスタ新宿には、山賀コーチがいらっしゃり、激励のお言葉を頂く。20時頃に白馬に着き、駅の足湯前で就寝した。

頭を軽く超える黒ガッシャーを背負う一年生・壬生

12/24
天気 快晴
気温-1°C(鎌池)
6:15 白馬駅〜6:55 白馬八方尾根スキー場〜8:00 八方駅発〜8:30 兎平〜9:30 鎌池発〜10:30 白馬池山荘〜11:30 第2ケルン〜12:30八方池〜14:30 設営

スキー場まで徒歩で向かう。スキー場到着後ウェアと靴を身につけて、ゴンドラに乗る。スキー場はスタッフに止められたためリフトで鎌池まで上がる。全装を背負っても横向きになって座れば問題はなかった。雪崩の心配は地形的にも雪質的にもなさそうなので、鎌池でビーコンチェックを済ませ、ワカンを装着して、尾根沿いに稜線へ上がる。鎌形が開始15分くらいで肩が痛いと喚くが、みんなで鼓舞しながら前に進ませる。山荘前で休憩を取り、ピッケルを取り出し行動再開。第2ケルン通過後は壬生もキツそうな歩みであったが30分くらいで八方池の幕営予定地に着いた。

天気は最高。八方池へと歩みを進める。

幕営地は池の辺り丘の南側を選択した。積雪は2mのプローブの長さ以上ある。整地と壁を構築してテントを張った。訓練を行う予定だったが、設営に時間をかけたため明日に持ち越しとした。就寝後、12時ごろ真道がテントの見回りに出ると雪が降り始めていた。ラッセルを行いテントへ。

完成した我が城。だがこれでは来たる寒波には高さが足りなかった。

12/25
天気 雪
気温 -5°C
積雪 20cm
5:30 起床
7:00 訓練開始〜雪崩捜索3.5h、支点構築・懸垂下降1.5h、スタカット・fix 通過2h〜14:30 帰幕〜19:00 就寝

準備にかなり時間がかかり目標時間を15分オーバー。1年生に何が問題か、時間を短縮するために何ができるかを自分たちで考えさせて、明日は時間を切れるようにと伝えた。ビーコンチェック後雪崩捜索訓練を開始。シャベリングのレクチャーをして実践的な訓練へ移行。最初はビーコンをタッパーに入れて埋めていたが、プロービングの的としては小さすぎるので、途中から空のガッシャーに入れて埋めることにした。最初はファインサーチにビーコンの扱いに慣れず1年生は時間がかかる。鎌形は、視野を広く色々な要素を考えながらメンタルマップを描きマルチタスクを行うのが苦手なようで、一つのことに集中すると他のことを忘れてしまう節があり、ビーコンサーチ、シャベリングに最後まで苦戦していたが徐々に要領を掴む。コミュニケーションの質も回を重ねるごとに高まり、組織的な動きができるようになっていた。その後支点構築の復習。形だけではなく、そのような構築の仕方をする一つ一つの意味も理解しているか確認しながら復習した。その後懸垂下降。休憩してスタカットと fix通過のシステムを確認して訓練を終了した。

12/26
天気 雪 
気温 -15℃
積雪 25cm
5:30 起床~停滞

アタック装備の準備に目標時間に1分遅れたが昨日より早くなった。外は昨日と打って変わって風が強い。訓練をやろうと試みたが、ゴーグルをかける必要がある程なので、凍傷などの懸念から、ビーコンチェックだけ行い本日は停滞とした。

12/27
天気 雪
気温 -10℃
積雪 15cm
5:30 起床~6:40訓練開始 スタカット(6ピッチ1h30min)、確保三種~10:00 帰幕~19:00就寝

朝の準備時間は目標時間を上回り成長を見せた。本日も風が強いが、1メニューでもやろうということで、スタカット訓練を始めた。ペアは鎌形・岩波、壬生小池で行う。スタカットのタイムアタックを行うが、風や気温など新人合宿に比べて過酷な環境でありロープ操作に苦戦した。システムは理解しているようなので、システムの構築スピードや意思疎通などの部分でクオリティを上げていく必要がありそうである。その後谷川でやっていない壬生だけ確保三種を行い、テントに戻った。就寝後、夜中真道と田代でテントラッセルを行うが、この時はまだ風はそんなに強くはなかった。

12/28
天気曇りのち晴れ 
気温-15℃
5:00 起床~停滞

朝起きると風が強い。スタードームが雪で埋まり始めているが、明るくなってからラッセルを始めようということで、朝食後少し待機していたが、いよいよテントが潰れてきたので、全員でラッセルを始める。雪は降っていなく時折晴れ間が見えるが、風が強く雪がテン場に吹き溜まっていく。スタードームのテントポールが雪の重さで折れてしまった。1年生をテント内で休ませながら、全員で昼ごろまで雪を掻き出して耐え抜く。昼頃になると風は弱まってきたので、一旦テント内で休み濡れたウェアを物乾する。その際、このままここに張り続けても今夜以降安全かを上級生で議論する。今夜から明日にかけては高気圧に覆われ天候は穏やかになるだろうとの予測から、翌日問題なくここからアタックできるだろうということで、今夜もここに張ることで意見が一致した。休憩後ラッセルとテントポールの修繕を施し、この日の行動を終了した。深夜真道が外の見回りをするが風が弱く、雪壁を高くしたこともあり、雪の溜まり方は初日程度であった。ラッセルしてテントに戻る。

12/29
天気 快晴後雪 
気温 -5℃
5:00起床〜6:30 出発〜8:00 丸山ケルン〜9:30 唐松岳頂上山荘〜10:00 唐松岳山頂〜12:30 八方池TS撤収開始〜13:45 下山開始〜14:45 八方池山荘〜15:30 八方駅 下山

昨日までの荒天が嘘のような無風アタック

起きると久々の快晴無風である。アタック装備を準備し、アイゼンを装着して出発する。稜線上は雪は飛ばされていてアイゼンで快適に歩ける硬い雪であった。時折膝まで埋まるようなところがあった。鎌形の足取りが1ピッチ目から重いが、ラッセルのトレース幅を小さくして負担軽減を試みる。頂上山荘手前で、クライムアップで登る箇所があり、鎌形はうまく蹴り込めず苦戦していた。タイムリミットに間に合うか微妙なので、山頂までの1ピッチは鎌形・真道以外は先に山頂へ向かわせることにした。山荘から先は風が強く、東側には雪庇ができている。タイムリミット2分前で、頂上直下の部分で蹴り込みに苦戦しながらもなんとか登頂した。

粘り勝ちした末の山頂、最高!!

写真を撮り、時間もないのですぐに下山に移る。八方尾根に戻り風が弱まった所で、田代・真道・鎌形以外は先にテン場に向かい撤収作業を始めるように指示した。下山中空が徐々に雲に覆われてきて時折降雪も観測した。帰幕後すぐにパッキングをして撤収。出発前、アイゼン装着に手間取る。1ピッチで八方池山荘に着き、リフトとゴンドラを乗り継ぎ下山した。

久しぶりに完遂した合宿の達成感に浸る。

総括

 上級生ですら初体験レベルの豪雪の中で、テントを守り抜き、訓練や唐松岳登頂を完遂したことは新雪期合宿失敗した我々にとっては大きな成果であった。この経験は今後の山行、山での生活で一つの自信になるだろう。

 上級生も何としてでも合宿を成功しようという強い思いで、各々の役割を全うし皆団結・協力することができたと思う。本当にありがとう。

 1年生は初めての冬山で、今回のような過酷な山の姿を目の当たりにしたのは狼狽える部分もあったと思うが、それでも最後までやり抜き無事に下山できたことはよく頑張ってくれたし、今後に活きる貴重な経験となるだろう。しかし、我々が目指す冬山のレベルはこんなものではないということは忘れないで欲しい。訓練と停滞続きで今回の山行では肉体的にはあまりきついことはしていない。今回経験できなかった重い荷物を背負い雪深い山の中を何日もかけてラッセルして登って行くというのはかなりの運動強度が課せられるし、アタック時もよりシビアな技術や集中力が要求されるルートを通過する場面が出てくる。だからこそ、今後の山行は今回とは比べ物にならない負担が肉体的にも精神的にもかかるということを念頭に置いて、ここからさらに上のレベルを目指してトレーニングに励んでほしい。また、1年生にはもっとチームワークというのを大事にして行ってほしいと思う。もちろん1年生のうちの辛い合宿を乗り越えるために協力するというのもそうだが、それ以上に来年度上級生として下級生を指導し山に連れて行く身として、3人で互助的に協力し連携できる関係ができているかというのはとても重要だと思う。ミスをなすりつけ合ったり、足を引っ張り合ったり自己中心的に動いてしまう場面が見られたけど、ライバル意識ももちろん大事だが、あくまでも同期同士は山の中で一番近いチームの仲間としての意識をもって協力して動いてほしいなと思う。各々が長所や短所、得手不得手があるのは当たり前で、どこかで力を貸しながら他のところでは仲間の力を借りて、そうやって助け合いながらじゃないと絶対にこの先の山は登ることはできない。そしてそのチームワークを発揮するためにも、もっとコミュニケーションを大事にしてほしい。コミュニケーションていうのは、一方的ではダメで、相手に伝わって初めてコミュニケーションになる。返事をするっていうのもコミュニケーションの基本だけど、それすらもできていない時があるよ。頷くだけじゃ分からない、こいつまだ元気だなとか声という媒体だからこそ伝わる情報がある。加えて、スタカットで手間取って相手を待たせた時に「ごめん」の一言とか、荷物を持ってもらった時に「ありがとう」の感謝とか、そういう気持ちを伝える言葉のやり取りも、互助的な信頼関係を築く上では大事なコミュニケーションだと僕は思う。合宿や部活動を重ねて、自分や仲間の長所や短所、性格なんかが分かってきたと思うから、それを言葉にした上で行動に移して互いに助け合いながら、強いメンバーシップを築いて欲しいなと思う。

お疲れ様でした。