2020年度 春山合宿

1.対象:北アルプス 涸沢岳西尾根経由 涸沢岳、奥穂高岳

2.日程:2021年3月4日~3月8日

3.参加メンバー:小野(4年)、浅川(4年)、真道(3年)、田代(3年)、小池(2年)

涸沢岳山頂で笑顔を見せる早稲田大学山岳部

4.概要: 

3月4日


10:30部室集合〜19:00平湯着〜20:00新穂高温泉着

部室に集合し、装備振り分けを行い最後の準備を整える。バスタ新宿から高山行きのバスに乗車し、平湯でバスを乗り換えた後新穂高温泉に向かう。登山指導センターにて就寝した。

3月5日


気温:-6℃ 天気:晴れのち雪 前日の積雪:0cm
5:00起床〜5:50出発〜6:00デポ地点〜6:20再出発〜7:45穂高平着〜9:10白出沢出合い〜10:45 1880m地点〜11:45 2070m地点〜12:45 2270m地点〜13:30 2420m幕営地〜14:20幕営完了 


5時に起床し、準備を整える。1ヶ月前に訪れた槍ヶ岳強化合宿と同様の地点でデポを行うこととし出発。デポ地点にてスキーを装着した後、穂高平を目指す。積雪は1ヶ月前と比べてかなり減少しており、山肌の様子やトレースの状況はまるで残雪期のようであった。穂高平下部の沢周辺では融雪も始まっていた。1時間半ほどで穂高平に到着し、休憩の後再出発する。順調に移動でき、1時間ほどで白出沢出合いに到着した。白出沢出合いで休憩とスキーのデポを行った。ワカンを装着し尾根の取り付きまで向かうが、雪が締まり傾斜も増してくることからアイゼンに履き替える。そこからは1時間毎休憩をはさみ、200m/時の速度で高度をあげることができた。11時前には当初の幕営予定地であった、1800m地点に到達した。雪面の状況と歩行速度から、今日中に2400m幕営適地まで移動できると判断し、行動を継続した。1800m地点は尾根が広く緩やかになる場所であり、適切に整地を行えば大型テントを張ることができる場所であった。その後も、速度が落ちることなく、2400mの幕営地まで行動することができた。幕営地到着後、テント2張り分の整地を行い幕営を完了した。周りは樹木に囲まれており、風の影響をうけにくい場所であった。行動終了後から水を含んだ重い雪が振り始めた。

3月6日


気温:-5℃ 天気:快晴 前日の積雪:10cm
4:45起床〜6:00出発〜6:50ジャンクション〜7:30蒲田富士〜9:50F沢のコル〜10:30 50mFIX完了〜11:30 60mFIX完了〜11:50下山開始〜14:00幕営地

4時45分に起床し、涸沢岳手前までのルート工作を行うため、6:00にテン場を発つ。前日に10cmの降雪があったが、アイゼンのみで行動が可能であった。すでに2400mに幕営していること、本日トレースを付けることができ、翌日まで降雪がない予報であることから、当初予定であった2500m幕営地までテントを上げる必要性は薄いと判断しルート工作のみを行うこととした。前日の積雪から多少のラッセルが必要であったが、1時間ほどで、ジャンクションに到達することができた。ジャンクションでは下山時の道迷いの可能性があることから、赤旗を設置した。その後蒲田富士手前で50mのFIXを行った。残置ロープが出ている部分もあったため、上部は残置を利用する箇所もあった。蒲田富士を通過し稜線上に出た。警戒していた雪庇はチビ谷側のみに存在しており、白出沢側を巻きながら通過した。F沢のコルに下る直前の稜線上はナイフリッジとなっており、FIXを張り、白出沢側を通過した。

蒲田富士の頂上付近をトラバースする

F沢のコルへの下りでは特に危険を感じなかったためそのまま移動した。太陽が出るとさらに気温が上がり、予想していたアイスバーンはどこにも見当たらず、雪面も残雪期の雪のようであった。また、無風であり非常に穏やかな一日であった。F沢のコルからの登りも、アイスバーンとなっている箇所は皆無であったが、翌日の朝通過することを考え、予定通り50m1本、60m1本のFIXを連続して設置した。

蒲田富士付近から涸沢岳を望む

スノーバーやハイマツを利用しながらFIXを張った経験が乏しいこともあり、速度の面で課題が見られた。さらに実践を積み、素早く適切に支点を構築する経験を積む必要がある。その後、FIX終了点から涸沢岳山頂に続く稜線上までを偵察し、下山を決めた。同ルートを行きに設置したFIXを利用しながら下降し、14時に帰幕した。下りで浅川に膝の痛みが発生する。帰幕し服薬後、様子を見ることとした。

3月7日


気温:-5℃ 天気:快晴 前日の積雪:0cm
4:15 起床〜5:30出発〜6:40蒲田富士〜6:55F沢のコル〜8:40穂高岳山荘〜9:40奥穂山頂〜11:05穂高岳山荘〜12:15F沢のコル〜13:30蒲田富士〜14:30帰幕


4時15に起床し、5時半に出発する。浅川の膝の痛みは昨日に比べ改善したものの、アタック中に再発する可能性も否めないことから、テントにて待機することとした。積雪はなく、前日のトレースをそのまま利用することができ、アイゼンの歯がよく効く雪面であった。前日設置したFIXを使い、素早く移動する。計画では5人でのアタックにロープを3本持参するとしていたが、浅川の不参加により4人となったため、2本持参することとした。従って、ナイフリッジ上に設置したFIXを回収する必要がなくなり、時間の短縮につながった。涸沢岳稜線上に向けての登りも、FIXを使うことで素早く安全に通過することができた。稜線は滝谷側に切り立っており足元に注意して進む。FIX終了点から1時間10分ほどで涸沢岳山頂に到着し写真撮影を済ませた。

白出のコルへ下降する小池

この時点で昨日より風が出ていたものの影響は少なく、快晴であった。穂高岳山荘前で風を避けつつ休憩し、奥穂高岳を目指す。途中3名の登山者と出会う。奥穂高岳への登りも予想していたより雪が少なく、夏道の鎖を利用することができた。ロープを出す予定であった雪面も柔らかい雪の吹き溜まりとなっており、トレースをたどることで危なげなく通過することができた。結局山頂までロープを張ることなく進むことができた。途中、道迷いが発生しやすい間違い尾根分岐も晴天のため問題なく見分けることができた。山頂に到着し写真撮影の後、同ルートでの下降を始める。登りではロープを出さなかったが、急斜面の下りとなることから、梯子上部の岩稜地帯で50mFIXを張り通過した。再び穂高岳山荘にて休憩をとり、涸沢岳までを登り返した。日も高く上がり、雪が緩み始めているのを感じる。FIX地点に到着後、素早く回収しながら下山した。FIXの設置、回収の要領は下界でも確認していた通りで、うまく連携ができていたように感じる。同様にしてナイフリッジ上のFIXも回収し、前日と同様に下山する。途中、蒲田富士直下の下りで、登ってきた登山者とすれ違うため待機する。その後全てのロープを回収し、帰幕した。

3月8日


気温:-6℃ 天気:晴れ 前日の積雪:0cm
4:45起床〜6:30出発〜8:00白出沢出合い〜8:50穂高平〜9:50デポ地〜10:00新穂高ロープウェイ


 4:45に起床し、遅めの6時半に下山を開始する。浅川の膝の痛みもなく行動には問題がなさそうであった。また、下山ルートもトレースがあり、アイゼンで問題なく下ることができた。急斜面に気をつけながら、どんどん高度を下げていく。8時には白出沢の出合いに到着し、デポしてあったスキーを装着した。前回訪れた2月に比べ、林道の雪にも水分が多かったことで速度が付きやすい状態であった。スピードに注意しながら下るが、林道上に落ちている枝などに足を取られ転倒することも多くあった。小池と真道は早々にワカンに履き替え、スキーを背負って下山した。スキーは使いこなすことができれば便利な道具であるが、使いこなせるようになるまで時間がかかると実感した。穂高平で全員ワカンに履き替え、蛇行する林道をショートカットし下る。再び林道に合流した地点で、小野、田代はスキーに履き替えそれ以外はワカンで下山した。雪融けにより穴が空いた箇所などは特に注意して下り、10時には新穂高ロープウェイに下山することができた。

総括


 2月に引き続き、同様の山域での活動であった。1ヶ月という期間で気象に大きな差が生まれることを、身をもって体感することができた。また、実際にルート工作を行いながら目的の山頂を目指すという経験は、初めての者も多かった。今回の合宿を経て、このような登り方が、より大きな登山の基礎となっていくと実感できたのではないだろうか。
 今合宿では準備段階から、FIX設置箇所や危険箇所の共有を特に入念に行った。その結果、現地では特に指示することなく自主的に行動することができていた。1年間の集大成の合宿として、状況に応じ自ら判断しながら、計画を計画通りにこなす実力が付いてきたと感じている。しかし、ルート工作の速度面を考えると、まだまだ改善の余地が多くある。今回は天候に恵まれたが、今後成長を続ければよりシビアな環境で難しい作業を求められる場面がでてくるだろう。どのような状況にも自信を持って対応できるよう、特にロープワークの速度面での改善を目標に定め、確実性と両立しながら練度を高めていってもらいたい。また、雪面が安定していたことから、奥穂高岳直下においてロープを出さずに行動したが、安全面を考慮しロープを出すべき地点であるとの指摘を受けた。新人合宿などパーティー構成、雪面の状況が変わる場面では常にロープを張りたい。お疲れさまでした。