2017年度新人合宿

1.対象:北アルプス 穂高連峰涸沢

2.期間:2017年6月8日~2017年6月14日

3.メンバー:4年CL福田、2年SL中島、浅川、小野、1年香取、中山OB、橋本OB、萩原OB

4.行動詳細:
6月8日(木) 曇り16:30部室~22:40東京駅八重洲南口バスターミナル=高速バス=05:30上高地バスターミナル
授業で遅れる福田以外は16時半に部室に集合し団体装備、個人装備の確認をする。準備と最終準備会で新人の個装チェックをしていたので、忘れ物もなくすぐに確認を終える。香取は高校山岳部出身だけありパッキングも上手い。早稲田で夕食をとり終わるも時間が余ったので新人に練習させていた穂高連峰の概念図を書かせる。よく覚えている。準備は万端のようだ。出発前に部室の掃除をし、大きく膨れたガッシャーと共に東京駅八重洲南口へ向かう。雨の予報だったが、雨に降られることもなく22時半に「さわやか信州号」に乗り込んだ。

6月9日(金) 晴れ 3℃05:30
5時半に上高地バスターミナルに到着。バスを降りるとあまりの寒さに目が醒める。気温は3度。道理で寒いわけだ。空には薄く雲がかかっていたが、身支度を整えている間に青空が広がり奥穂高岳もハッキリ見えるようになった。6時に上高地を出発。ここから横尾まで13kmの遊歩道歩きとなる。明神、徳沢まで1ピッチずつかけてゆっくり進む。左手に聳える明神岳の岩峰には所々残雪が残っていた。また、途中看板に6/1明神付近での熊の目撃情報が貼られていた。徳沢で上條OBに挨拶する。徳沢園の美味しいコーヒーに加えステーキ丼までご馳走になる。ありがとうございました。ステーキ丼パワーでペースを上げ、9時20分に横尾に到着した。ここでスパッツを装着し、読図の確認をしたうえで横尾谷に入る。本谷橋手前の沢に雪がたっぷり付いているので、ツボ足での雪上歩行を1時間半ほど行う。特に下りは習熟が必要だ。訓練場所から5分で本谷橋に到着。6/5に架橋されてはいるものの閉鎖されているため、橋から100mほど上流で雪渓を渡り登山道に合流する。登山道は沢状地形には雪がもれなく付いており、二年生を香取の下に入らせながら通過した。横尾本谷出合を過ぎた風倒林のあたりで登山道を外れ雪渓歩きとなる。新人の香取は慣れない雪上歩行で若干の疲労が見られるもしっかり付いてきておりさすがだ。例年通り涸沢ヒュッテまで800mほどの岩から競争をし、涸沢ヒュッテまで一気に駆け登った。中島、浅川、小野、香取の順。ノルマの25分を切ったのは中島だけであった。涸沢ヒュッテの掘り出し作業の進行具合を見ると涸沢はここ4年で最も残雪が豊富であろう。他に3張りしかないテント場に小川OBから頂いたダンロップのV6を設営した。設営手順が容易であった。二年生が香取に指導をしながら夕飯を作る。香取は包丁の扱いに慣れていた。

6月10日(土)4時半 曇りのち雨 5℃ 04:30起床~05:45出発~06:00訓練開始~10:30OB合流~12:405,6のコル~13:00BC帰幕
4時半に起床し、5時45分に出発する。獅子岩付近まで雲に覆われているがそれより下は視界がよい。6時に涸沢ヒュッテ裏の斜面で雪上歩行訓練と滑落停止訓練を行う。雪はよく締まり、訓練に適していた。滑落停止訓練中の10時半頃OB隊がBCに到着される。この時間帯から時折雹が混じる雨が降り出す。その後スノーバーの縦埋め、横埋めの支点構築訓練をした後、香取が作成した横埋めアンカーでアンカーテストを行う。5人の静荷重だけでなく、衝撃荷重でもビクともしなかった。11時半に訓練を切り上げ、5,6のコルへと出発する。途中で香取が足の指の冷えを訴えた。靴の防寒性が不足していたのが原因だ。1)事前に買い替えさせるべきであった。なんとか耐えられそうなので、そのままコルを目指す。ここでも競争をした。中島、小野、浅川、香取の順であった。12時40分に全員が5,6のコルに到着する。雨で気温も低いので、そのままBCに下る。香取はコルから前を向いて下ることができ、スピードも速い。下りのスピードは安全性に直結するため、さらに伸ばしていきたい。一気に駆け下り13時にBCに帰幕した。17時頃に夕飯を食べ、19時には就寝。寝るまで雨は降り続けていた。
訓練内容:ツボ足での歩行1.5h、アイゼン歩行2h、滑落停止1h、アンカー構築訓練1h

6/11(日)晴れ −2℃ 
新人隊:5時45分 BC発、13時 5,6のコル下でロープワーク、14時 5,6のコル途中の斜面で現役が合流、15時 涸沢発、18時20分 上高地着
5,6のコル下でロープワークの訓練をしたのち、5,6のコルまでスタカット。5,6のコル直下より懸垂下降。下降後、現役学生に合流し、一緒にBCまで下る
訓練内容:スタカット9p、懸垂下降3p
上級生隊:05:50BC出発~07:30白出のコル~08:00涸沢岳~09:45最低コル~12:30北穂高岳南峰~14:00OB隊合流~14:30BC帰幕
夜は余りに寒く、夏用シュラフではとても寝られなかった。4時半に起床し、外を見るとモルゲンロートが見事だった。快晴だ。5時50分に出発し、小豆沢を詰める。昨日の雨と明け方の冷え込みの影響でカチカチにしまった雪面にアイゼンを蹴り込みながらどんどん高度を上げる。7時頃から雪が緩んできた。例年小豆沢上部にあるシュルンドは空いておらず岩は雪の下だ。7時半に白出のコルに到着し、8時に涸沢岳の山頂に立つ。無線での交信を試みるものの、失敗する。この後合流まで無線をオープンにしていたが一度も交信できなかった。2)涸沢岳からの下りはクサリにデイジーをかけながらFIX通過の要領でどんどん下る。D沢のコルへの下りで30m1pFIXした。それ以降もクサリ場を慎重に通過しながら9時半にカメ岩で休憩し、9時45分に最低コルを通過した。ここから北穂高岳へ登り返すが滝谷側の奥壁バンドのトラバースが昨日の降雪で氷化しており危険なため、ペツルのボルトから40m×3pFIXした。いずれも支点はピナクルで取れた。3p目で稜線の涸沢側に出ると雪壁が出てきたのでここを小野がリードで30m1pFIXした。二年生もリードや支点構築に慣れてきたようだ。ドームを巻いてからはロープを解き、所々クサリを使いながら北穂高岳へと向かう。南峰手前の氷化したトラバースでも1pFIXし、12時半に南峰へ到着。リミットの12時を過ぎていたので、北峰へは向かわず北穂沢を一気に下り、5,6のコルへと向かう。14時に5,6のコルの200m下付近で懸垂下降の訓練中の新人隊と合流した。その後一緒にBCに下り、14時半帰幕。OB方を見送った。ありがとうございました。OBを見送った後は涸沢ヒュッテでツェルト搬送の梱包方法を確認し、翌日の奥穂アタックに備えた。17時に夕食をとり、19時には就寝。

6月12日(月) 晴れ -2℃ 05:00起床~06:15出発~07:45白出のコル~10:20奥穂高岳~12:00白出のコル~13:00搬送訓練~14:00BC帰幕
5時に起床し、6時15分に出発。遅出が功を奏し、雪の締まり具合もちょうど良い。小豆沢を1時間半で詰め切り8時に奥穂への登りに取り付く。白出のコルから雪壁が確認出来たので、アイゼンを履いたまま取り付くことにした。小野、浅川を先行させクサリ場を30mFIX。その後雪壁を50mFIXして通過。雪壁にFIXしたロープは残置した。雪壁を越えたところで夏道に合流したのでアイゼンを外し頂上へ。頂上手前にも雪壁が出てきたので、浅川リードで30mFIXした。このロープも残置し、10時20分に奥穂高岳山頂に到着。徐々に雲は沸いてきているが、八ヶ岳から後立山連峰まで見渡せる。素晴らしい天気の中での登頂に新人の香取にも笑顔が溢れる。写真撮影を済ませた後は中島、浅川に残置ロープを回収させながら下り12時に白出のコルまで下りきった。ロープを3本持参してきたが、残置や下降を考えると4本あるとより早く行動できたように思う。コルの一段下から2pボラードで懸垂した。香取は少しずつ懸垂にも慣れてきている。懸垂後は小豆沢を駈け下った。BCまで下る途中でツェルト搬送訓練を行う。梱包に30分以上掛かったので、習熟が必要だ。2ピッチ分ロープで引き下ろした後BCまで引きずりながら搬送し、14時に帰幕した。

6月13日(火) 晴れ 5℃04:30出発~05:40出発~06:30モレーン~10:45北穂高岳~12:45BC帰幕
4時半に起床し外へ出ると薄くガスっているもののモルゲンロートが美しい。天気は良さそうだ。5時40分に出発し、北穂沢を詰める。北穂沢は2500m付近で1度夏道を歩くが、そのほかは基本雪の斜面を歩くことが出来る。6時半にゴルジュ上のモレーンで休憩する。北穂沢上部は東稜からの落石が目立っていたので、南稜よりに進むことにする。浅川と香取でザイルを結びスタカット訓練を開始する。途中落石が3回あった。南稜とインゼルの間のルンゼを抜けたところまで合計9pスタカットをし、松濤のコルへと向かう。9pで3時間20分を要した。コルへの登りでFIX通過の確認のため2pFIXした。コルに到着すると飛騨側から雲が迫ってきたのでそのまま北穂高岳北峰へと向かった。山頂は雪に覆われていた。ここ4年で初めてのことだった。山頂で15分休憩したのち11時に下降開始。コルへの登りでFIXした残置ロープ2pに加えてさらに50m×3pFIXしてインゼルの上をトラバースした。トラバースを終えた後は香取の下に二年生を入らせBCまで下った。5pFIX通過をしたにも関わらず1時間45分でBCに着いたのは練度が高まってきている表れだろう。さらに磨いていこう。12時45分に帰幕した後はテントの設営訓練をし、最後の夜に備えてテントを張り直した。16時頃から2時間ほど雨が降ったが、夜には星空となり20時頃就寝。

6月14日(水)快晴 気温不明04:30起床~06:00出発~08:00横尾~09:00徳澤園~11:30上高地
4時半に起床し、6時前に撤収完了。入山以来最もスッキリ晴れ渡った空の下上高地へ向け下山を開始する。香取の雪上歩行の確認のためにまだ日が当たらず固く締まった斜面をツボ足で下っていく。慎重かつ確実に下れるようになっている。登山道は入山時と比べて残雪は減ってはいるが、それでもこの4年で一番多いことには変わりない。本谷橋もまだ封鎖されているままであったので、入山時同様100m上流の雪渓を渡り本谷橋まで。ただし沢の中央は雪が溶け落ちて穴が空いているところもあったので、あと三日ほどで通過できなくなるだろう。本谷橋からすぐの行きで雪訓した沢もまだまだ十分残雪がある。それ以降は雪が残っておらず、すぐに横尾に到着した。横尾から徳沢への道は一部崩壊したらしく、ブル道を迂回する箇所があった。梓川河岸の清々しい道から新緑まぶしい樹林帯の道を気持ちよく歩き9時に徳沢園に到着した。上條OBはご不在であったが、従業員の方に下山の挨拶をすると、カレーライスにソフトクリームまでご馳走していただいた。ありがとうございました。徳沢園でエネルギーを注入できたので、上高地までひたすら歩き、11時半に上高地バスターミナルに到着。上高地アルペンホテルの風呂で疲れを癒し、快晴の上高地をあとにして松本経由で帰京した。

⑤総括
全体の目的については残雪、天候に恵まれ概ね達成できたといえる。例年以上に雪の上を長く歩くことができ、奥穂高岳、北穂高岳に登頂することができた。OBのご協力によって新人だけでなく2年生にも涸沢岳から北穂高岳の縦走をさせることができた。ありがとうございました。ルートファインディングや、支点の構築、リードの経験を補うことができ、成長した姿を見ることができたように思う。
また1年生についてはよく頑張っていたと思う。体力についても例年並みかそれ以上といえる。また、ロープワーク等の技術も覚えが良かった。事前の努力が結実したものである。また、モチベーションも高く今後が楽しみだ。これから1年間の合宿を通してさらに高めていってほしい。
しかし、課題もあった。二年生が合宿の目的を完全に達成できたとは言えないことだ。歩行訓練やロープワークの指導はよくできていたが、その他のケアが不十分であった。休憩中に1年生の下に入ったり、アタックの際に声掛けをしたりできたといえるだろうか。また、怒らなくてはいけない場面で怒ることができなかった。ダメなことをダメと言えないのは危険な組織である。メリハリをつけてやっていってほしい。何度も言っていることだが、9か月後には四年は引退し、二年生が最上級生として部を引っ張っていかなければならない。新人をきちんと育てることが未来の自分たちを助けることになるという意識をもって今後は上級生として頑張ってもらいたい。
今合宿は新体制で初の合宿である。船出となる合宿で全員無事に下山できたのは皆のおかげだ。ありがとう。よかったことはさらに伸ばし、悪かったことは修正するためにしっかり反省し今後1年間に繋げていこう。