2021年度 爺ヶ岳強化合宿

  1. 日程:2022年2月6日〜10日
  2. 対象:爺ガ岳 東尾根
  3. メンバー:4年真道C.L.、田代、江口、3年田中、1年岩波、鎌形、壬生
  4. 概要
    2/6
    19:00 部室集合〜22:00部室出発〜23:05バスタ新宿発

18:00に大学は閉門であったが、学生証があれば入構可能ということで、19時に集合。装備は壬生、岩波は総量30kg、鎌形は25kgとした。バスタ新宿には山賀さんが深夜発のバスにも関わらず見送りに来てくださった。差し入れに、文明堂のどら焼きを頂く。いつもありがとうございます。バスに乗車し席に着くなり、アイマスクと耳栓で外界の情報を完全に遮断し、リクライニングシートを限界まで押し倒して、来たる明日の入山に備えて必死に眠ろうとする一同であった。

強化合宿の動画です!

2/7 天気:快晴 気温:10℃ 
6:00 大町駅発〜6:30 鹿島山荘〜7:10 行動開始〜10:30 1331m〜11:30 1476m〜14:10 1776m〜15:00幕営〜19:00就寝

大町駅に到着。ジャンボタクシーが6時に迎えに来るので、それまでにウェア身につけと靴を履いて戦闘体制へ。鹿島山荘でタクシーを降車。ワカンを装着し、ビーコンチェック。山荘左奥のおばばの碑が取り付きの目印。ありがたいことにトレースは全くない。スタート直後からジョイフルラッセル。先頭はザックを下ろして雪を掻き分ける。高さは膝下ほど。岩波と鎌形は、最初はワカンでの歩き方に慣れずに一歩進むごとにステップを破壊していくので、上級生がコツを伝授。一度は鎌形を後続隊として行動することにしたが、結局鎌形も徐々に歩き方の要領を掴み、最後まで全員で行動した。JPに到着し、設営隊とラッセル偵察隊に別れて作業をする。テントは樹林の中に設営。ラッセル隊は真道と田中。JPから先はさらに積雪量が増え、膝上ラッセルとなる。P3までラッセルを施し帰幕した。夕食はペミカンカレー、しかもチーズ、マッシュルーム入り。安定に美味い。

天気最高!
上から幕営地を眺める

2/8 天気:晴れ 気温:-8℃
2:45 起床〜4:00 出発〜5:00 P3〜7:10 P2〜9:10 P3〜11:30 登頂〜12:30 P1〜14:00 p2〜14:30 p3〜15:00 帰幕〜18:30就寝

昨日の偵察でP2まで危険な箇所はないことが分かったので暗い時間に出発することに。ワカンを履きテントサイトを発つ。昨日付けたトレースのおかげでP3までは順調に歩みを進める。未開拓のP3からは先頭を交代しながら膝下ラッセルで進んでいく。6時ごろに辺りは明るくなるが、雪の量も増えてきたため、先頭の人はザックを下ろして進んでいく。FIXを想定していたP2の上りだが、積雪量が多く雪に埋まる感じで危険性はなかったので、ロープを出さずそのまま通過。P2に上がると、その先は尾根が細くなっていた。ところどころ雪庇も出ている。ただ、積雪量が多いため、「ナイフ」というほどの細さにはなっていない。ギャップになっている箇所を江口がリードでロープを張る。ナイフリッジもどきを通過するとさらに積雪量が増し、腰の高さの雪を掻き分けていく。P1手前から勾配が上がり、バンザイラッセルになる。振り返れば、ここがラッセルの核心だった。P1からはしばらくはラッセルのない平らな稜線歩きが続く。この辺りは時折風が強く吹くのでヤッケのフードを被る。やがてまた登りになりラッセル再開。量は多くはないが、P1以前の雪質より表面が固いので、崩しにくく進みにくい。先頭が雪を崩し、2番手が踏み固めに完全分業スタイルが最適解。ここで岩波が少しバテ始めたので、長めに休ませる。山頂まで標高差残り30mの辺りで雪が固くなってワカンだと歩きにくいのでアイゼンに履き替える。そのまま快適なラストスパート。間も無く爺ガ岳中峰の頂に到着。片道7時間半の雪との苦闘の末に辿り着いた頂。長くきつかったが故に登頂の価値も特別なものだった。西側は雲がかかり、立山はおろか鹿島槍も見えない。南側は晴れ間から、槍ヶ岳が遠くに見えた。さて、下ろうか。帰りは一変、重力に任せて下るのみ。ワカンに履き替えどんどん高度を下げる。3時間半でTSに到着した。

7時間半のラッセルの末の山頂!

2/9 天気:曇りのち快晴 気温: -5℃
2:45起床〜4:00出発〜7:50 p1〜9:30爺ヶ岳中峰〜11:30 fix回収〜12:20 p3〜13:00帰幕

江口、鎌形、田代のオーダーで幕営地を出発する。少々ガスが出ているが、風もなく、快適だ。一次アタック隊のつけてくれたトレースを辿るが多くの場所で埋まっており、想像以上のラッセルを強いられる。人数も少ないので、「これ以上深くならないでくれ」と願いながら進む。幸い、全て埋まってしまっているわけではなく、半分埋没、半分トレースが残っている、という感じであった。所々腰下ラッセルとなるが、江口と鎌形が頼もしくラッセルで進んでいく。p2に上がったところで雪が若干硬くなり、ワカンでは怖さを感じたので、アイゼンに付け替える。一次アタック隊がここでアイゼンを付けたという情報はなかったので、一晩でやはり雪の状況が変化している。ここからナイフリッジにエリアとなるが、積雪が多いためか、のっぺりしていてナイフリッジ感があまりない。鎌形も含めスピーディーに通過する。一次隊の設置してくれたfixも問題なく通過。p1の登りに直前に再びワカンに履き替える。トレースが消え、再びラッセルを開始する。斜度のあるやわらかい雪に鎌形が少々手間取るが、7:50、p1に到着する。山頂まであと少し、と思ったが、ここから時間がかかった。トレースは完全に消え、平坦稜線で膝上ラッセルを交代で行いながら進んでいく。山頂から80mくらいのところから雪面がクラストしはじめ、アイゼンに履き替えて山頂を目指す。9:30、快晴無風の山頂に立つ。長めに休憩を取ったあと、帰路につく。p1手前でワカンに履き替えFixを回収し、13:00帰幕した。

どら焼き美味しかったです!

2/10 天気:曇り 気温:-12℃
3:00 起床〜5:00 出発~6:20 1331m~7:38 鹿島山荘=下山

本日から天気が崩れるということで早めに出発することに。撤収を済ませ、つぼ足で下山する。順調に高度を下げて1.5時間で1331m。周囲も明るくなり、下には車道が見える。鎌形も下り方のコツを掴み始めペースが上がる。1時間で鹿島山荘に到着し無事下山。下山後タクシーを待つ間に徐々に雪がちらついて来た。お疲れ様でした。

  • 総括

厳しい気象条件が予想された厳冬期の登山であったが、運よく好天周期を捉えることができ、1次2次アタック共に成功を収めて、充実した成果を上げることができた。

冬山合宿の唐松岳よりも体力的にも技術的にも1段階レベルの上がった登山になったと思う。当日の天気は良かったものの積雪量はかなり多く、ハードなラッセルの経験を積めたし、fix通過の実践的な経験も積めた。

また、全員がモチベーション高く集中して取り組めていたように思う。限られた好天を逃さないように、各々が自分の役割・任務を全うしたからこそ掴めた登頂であった。1年生は3人で協力しながら、スピーディーな行動をしてくれていたし、何よりもよく最後までめげずに登ってくれた。鎌形も弱音を吐くことなく積極的に食らいついていて、大きな成長が見られた。1年生はラッセルなど冬山登山に関してまだ不慣れなところがあると思うが、1年生の伸びしろは無限大なので、あと2ヶ月で下級生に指導する立場になる意識と自分なりの目標を掲げて主体的に上を目指す向上心を持って、どんどん成長していってほしいと思う。上級生も全員が「両アタックの登頂成功」を向いて、一つになって行動できたと思う。江口もきつかったと思うが2回のアタックをよくやり遂げてくれた。ありがとう。

隊にとっては一つ大きな自信となる山行になったと思うが、ここで満足せずにさらに上を目指していきたい。あくまで、爺ガ岳東尾根は冬山バリエーションの入門であるし、これより長くて厳しい尾根はたくさんある。成功しただけに課題が隠れがちだが、各々自分の技術面・体力面・精神面で感じた課題やできなかったことは確実にあるはずなので、次の合宿に向けて改善できるように。そうやって自分のキャパシティーを広げていこう。

卒部してしまう上級生は、少しでも多くのノウハウを下級生に残せるように、下級生は上級生から学べるものは全て学ぶ意識で、次の春山合宿に向かっていこう。