2021年度 夏山合宿

  1. 対象:

・縦走;笠新道〜笠ヶ岳〜三俣蓮華岳〜黒部五郎岳〜薬師岳〜雲の平〜野口五郎岳〜ブナたて尾根

・定着;剱岳 八つ峰Ⅵ峰フェース、源次郎尾根

2. 日程:

・縦走:2021年7月31日〜8月7日

・定着:8月9日〜8月13日

3. 参加者:4 年:真道 C.L.、田代 S.L.、江口、3 年:小池、田中、1 年:壬生、岩波、鎌形

4. 概要:

7月31日 

13:00 部室集合〜18:15 新宿駅〜22:45 平湯バスターミナル

昼過ぎ、部室へと集合する。1年生の個装チェックと団体装備の振り分けを済ませる。1年生の装備は体力度に合わせて、重量と消費予定日を勘案し振り分けた。1年の団装の平均重量は7kg。鎌形はザックを背負うのに一苦労していたが、上級生が指導・サポートしながらなんとか背負う。バスに乗り込み平湯温泉へ。睡眠時間を確保するため、平湯のバスターミナルで就寝した。

出陣

8月1日 気温:23℃  天気:晴れのち雷雨

6:30 平湯BT発〜7:45 新穂高温泉口〜9:00 笠新道登山口〜11:00 1850m〜12:15 2100m〜13:25 2350m〜14:00 杓子平〜16:10抜戸岳〜16:40 雨天退避〜17:00  行動再開〜17:50 笠ヶ岳キャンプ場〜19:30 就寝

始発のバスに乗り込み新穂高温泉バス停で下車。準備は平湯で済ませたので、体操後すぐに出発。暑さの中汗ばみながら、1時間で笠新道の始点に到着。ここから本格的な登り。登り開始早々、鎌形のペースが極度にダウン。大股ではなく小さなステップで上がり省エネ歩行をするように指導するが、歩き方とペース共に改善が見られない。このペースだと16時にも着けそうになく、天候も悪化しそうだったので、持たせたいのは山々だったが、致し方なく登りの2ピッチ目終了時に荷物を抜き、上級生とまだまだ元気そうな他の1年生2人に配分した。その後、1時間で250mアップほどのペースに上がった。気温がピークに達した14時ごろ、杓子平辺りで壬生がバテて遅れ始めたので、壬生が持っていた鎌形の荷物を本人に返す。ガスが多くなり時折雷鳴が聞こえる。稜線直下2700m付近で雨足が強くなったので雨具を着るも、すぐに止み晴れ間が見えるほどに回復。南西の空には別の発達した積乱雲が見え、雨雲レーダーを確認すると16:30ごろに笠ヶ岳上空を通過する模様。時刻は15:30。残り1時間でTS着けるようにメンバーにペースアップを促す。しかし、稜線に上がっても壬生のペースが上がらない。16:30過ぎ、2753mピークを通過した辺りでかなり近くで大きな雷鳴が聞こえ、瞬く間に雹まじりの強雨が降ってきた。全員に雨具を着させ、低い姿勢で待避するように指示。ツェルトを取り出し、それで雨風を凌ぎ保温した。積乱雲内で雷が発生している時間は、15〜30分ほどとの知識を学んでいたが、5時ごろになると雨足が弱まり動けそうなので、壬生の荷物を上級生で分担し、足早に稜線上を通過。18時前に笠ヶ岳キャンプ場に到着した。すぐに幕営作業に取り掛かる。帰幕時間が遅く、装備も濡れてしまったので、明日の停滞を決める。

8月2日 気温:13℃  快晴

6:00 起床〜7:00 出発〜7:15笠ヶ岳〜8:00帰幕〜18:00 就寝

本日は笠ヶ岳のアタックだけを決行するということで、1時間で出発準備をする。しかし、米の鍋に水を入れ忘れて火にかけたらしく、口にすることはできない仕上がりの焦げた米が出来上がる。仕方ないので、笠ヶ岳ピストンのみということで、朝食は食べずにレーションを持って行動することにした。停滞だからとはいえ合宿中であり、やるべきことはちゃんとやるようにと1年生に伝える。15分で笠ヶ岳山頂に着き、合宿最初のピークを踏んだ。写真撮影をしてテントに戻る。テン場では外で装備を乾かす。田中が持ち込んだポップコーンを皆で楽しむ。明日は朝2時に起床することを決め、早めに就寝した。

8月3日 気温:12℃ 快晴

2:00起床〜3:15 出発〜5:35 秩父平〜6:45大ノマ岳〜7:55 弓折岳〜9:45 双六小〜11:30 双六岳〜13:45 三俣蓮華岳〜15:15 帰幕〜18:00就寝

2時に起床し、3時15分ほどで撤収作業を終えた。米もちゃんと出来上がった。当たり前だが。若干風が吹いているが天気はいい。秩父平の2ピッチ目終まではコースタイム通りの速さで通過する。しかし、それ以降は、鎌形のペースが段々と遅れ出す。ただ、明日は今日より行動時間が長いこと、それ以降は食料を消費して荷物が軽くなることを考えると、自分の荷物を最後まで持たせられるラストチャンスなので、隊の安全性が損なわれない範囲で荷物を抜かずに歩かせた。鎌形にペースを上げるように田代、真道が急かす。休憩中の鎌形はレーションも食べずに地形図を眺めていてまだまだ体力には余裕があるのは明らかだ。手を抜かないように鎌形を鼓舞する。一昨日バテていた壬生だが、今日は風があり割と涼しいのもあり、問題なく元気そうだ。江口の膝も大丈夫そう。予定より2時間以上遅れて三俣蓮華岳に到着。ここからは鎌形以外の一年生2人に上級生3人をつけて先に行かせ、幕営をさせるようにした。15時過ぎ鎌形も遅れて帰幕。田代、真道は三俣蓮華岳の巻道に雪渓ありとの情報を得たので、状況を偵察に行くが、我々の実力的には問題ないことを確認。田代のサプライズ桃缶を1年生は堪能。就寝前に明日以降の対応を上級生間で確認。鎌形が序盤から遅れるようなら荷物を段階的に抜くことを決定した。

8月4日 気温:10℃ 天気:快晴

2:00起床〜3:20 出発〜5:00 稜線との合流地点〜6:04 黒部五郎小屋〜8:24 黒部山頂〜11:07 赤木岳〜13:28 太郎平キャンプ場〜18:00 就寝

1ピッチ目途中、小雨が降り出したので雪渓前で雨具を着るもすぐに止んだ。三俣蓮華の巻道と稜線との分岐までで既に鎌形が目標タイムよりも大幅に遅れたので、食料パックを抜き取る。これ以上荷物を抜けば合宿している意味がないレベルの重量になることを自覚させ、その覚悟で行動するようにと伝える。その後はペースが上がった。岩波は前日に地形図でどのような景色が見えるか予習しており、行動中に予想と実際の景色の答え合わせをしながら山登りを楽しんでいて、その姿を見て感心した。目標タイム通りで黒部五郎岳に到着。山の上とは思えない暑さであり、隊員にもこまめな水分補給を促す。ここからは大局的には下りの行程。太郎山からテントサイトまでは、鎌形に食料パックを返しトレーニング。他の1年生もトレーニングさせるため、速いペースで先に行かせた。13時30分ごろ太郎平キャンプ場に到着した。1年生3人を中心に設営。夕食をとり就寝した。

8月5日 気温:12℃ 天気:快晴

2:00起床〜3:00出発〜4:05 薬師山荘〜4:40薬師岳〜500山頂出発〜6:17 TS〜6:47出発〜8:00 薬師沢〜9:00 左俣出合〜1000 薬師沢小屋〜12:00 雲の平〜13:45雲の平キャンプ場〜18:00就寝

1時間で準備を終え出発。軽装備で薬師岳の山頂を目指す。速いペースで山頂に到着。20分ほどで雲海の中から綺麗な御来光が昇る。過去2回ともガスに覆われていた登頂だった4年生にとっては嬉しい絶景を拝むことができた。御来光にパワーを頂き、いざ後半戦へ。記念撮影をしてテントサイトへと戻る。撤収時間は30分を切り手早くこなした。ここから雲の平を目指す。1ピッチで沢まで下りきり、ここからしばらくは歩きやすい木道が続く。岩波が所々フラフラしていて不安定な歩きが目立つので、バランスをとりながら歩くように告げる。3年生が1年生を鼓舞する場面も見られた。薬師沢小屋からは急登が始まる。ここで鎌形が急激にペースダウン。体力がないのは仕方ないが、登ってやろう、という気迫が感じられない。痺れを切らして強い口調で指導した。登りが終わったところで休憩をとる。休憩のコールと同時に息をあげながら鎌形がザックに倒れこんだ。やっと自分の限界を超えることができているようだ。そのレベルを自分に求めなければ強くなっていかない。鎌形のメンタルの弱さは、これから厳冬期を越える上で彼女の大きな課題の一つのように感じた。雲の平に上がると再び木道となった。笠ヶ岳方面には大きな積乱雲が発達している。キャンプ場までラストスパートをかける。到着時のキャンプ場には秘境の面影はなかったが、北アルプスの峰々と草原をを赤く染めあげる夕暮れ時は幻想的な趣を感じた。

8月6日 気温:9℃  快晴

2:00起床〜3:25出発〜4:30 祖父岳〜水晶小屋〜8:30 真砂岳〜9:05 野口吾郎〜11:52 烏帽子小屋

祖父岳登りで壬生が鼻血を出していた。順調に水晶小屋まで進む。ここから先若干切れたった部分が連続するので慎重に通過する。岩波は岩場の通過が不安定で課題があるので集中して歩き安定した歩行を身につけるように指示。本日のハイライトである野口五郎岳の登りでは、1年生も一丸となって鎌形を鼓舞しながらスパートをかける。青い空が広がり、山頂では主要な山々を一望することができた。富士山も望めた。山頂ではみんなでポーズを決めて記念撮影。山頂で一緒になったフレッシュな山ガールお二人にシャッターを切って頂いた。ここから3ピッチで烏帽子小屋に到着した。主将のサプライズ食料のおしるこが満を辞して振舞われる。ブナたて尾根下山に備えて体をしっかり休めた。

8月7日 気温 16℃ 天気:晴れ

2:00起床〜3:30 出発〜6:30 高瀬ダム〜10:00 信濃大町駅

涼しい中下ろうということで3時30分に出発。コウモリも飛び交う中での下山。どんどん高度を下げて3時間で高瀬ダムに到着する。皆下山を噛み締めていた。事前に読んでいたタクシーに乗り込み、温泉施設へ直行。その後、信濃大町駅から松本へと移動した。装備や食料準備、洗濯を分担し、定着合宿の準備を進める。下界は35℃の猛暑を観測しているので、木崎湖ではなく松本のカプセルホテルなどで休息をとることにした。天気予報を見ると10日午前が台風の影響のピークのようなので、9日入山で現地で停滞し11日の晴れ予報に掛けることに決定した。

8月8日 気温:35℃

休養日

本日は休養日。お昼頃に一回集合して全員の体調確認と翌日以降の行程を再確認した。

8月9日 気温15℃ 天気:曇りのち雨

5:56 松本発〜7:00 信濃大町〜8:00 扇沢〜10:00 室堂〜11:30 劔御前〜13:15 剱沢野営場〜17:00就寝

始発の電車に乗り信濃大町駅へ。そのまま雨の中バスに乗り換えて扇沢駅、立山黒部アルペンルートで室堂へと向かう。室堂で水を汲みパッキングを済ませて出発する。雨は止んでいたため、雨具の下だけを履いた。別山乗越まで2ピッチで行き、下りに差し掛かったところで雨足が強まったため、雨具の上を着た。野営場に着くと2張りテントがある。手頃なスペースを探して幕営した。

夕食後、就寝したが、徐々に雨と風が強まってくる。深夜顔にはねる水滴で目を覚ますと、4年生が泊まっていたダンロップはポールが折れ大破していた。スタードーム以外のテントを一時潰して、スタードームに皆集結した。テント内は浸水し全員シュラフはびちょびちょに。2時ごろ風雨がピークを迎え、上級生を中心に内側からテントを支えるようにして耐える。

8月10日 気温 12℃ 天気:強雨

終日停滞

昨日から引き続き雨風がつよい。ピークは過ぎたとはいえ、シュラフは乾かずしんどい時間が続く。上級生が交代でガスを焚きながら、朝を迎えた。

8月11日 気温9℃ 快晴

真道、小池:停滞

6:30 起床〜8:00出発〜11:00室堂

昨日の雨が嘘のように晴れ渡っている。テントを1張り失ってしまったので、小池と真道を残して他は下山することになった。小池、真道はテントの外で装備を乾かし、この2日間寝不足なのでよく睡眠をとって、明日の登攀に備えた。キャンプ場には夕方までに40張りほどのテントが立っていた。

8月12日 気温:12℃ 天気:曇り時々小雨

2:00起床~3:00剱沢野営場TS発~4:00長次郎谷出合~4:30長次郎谷出合発~5:50八ツ峰~6:30富山大ルート取りつき~11:30Dフェースの頭~12:00下降開始~12:30懸垂支点~13:50Ⅴ・Ⅵのコル~14:20下山開始~16:30劔沢野営場TS

文責:小池

 野営場から劔岳を眺めるだけではつまらないので、何とか登攀の可能性を探り真道・小池のみ劔沢に残った。午後から雨が降る可能性があったので3時から行動開始。TSから快調に飛ばし4時に長次郎谷出合に到着。しかし、まだ辺りは暗く落石のリスクが考えられたので明るくなるのを待ち30分後に長次郎谷をつめる。中間部辺りで雪渓が切れていたため左側のガレ場を通過。その後対岸に移ろうとした際、大きな破裂音が鳴り引き返す、上部の雪がしっかりした所から右岸に移り八ツ峰到着。2パーティほど居たがDフェースには誰もいないことからDフェースから登り始めることに決める。C・Dフェース間に雪が残っていたためアイゼンを外さずに基部を偵察。アイゼン、ピッケルが不要なことを確認しCフェースの岩小屋に荷物をデポ。6時30分に奇数P小池・偶数P真道で登攀を開始した。1P(Ⅳ+)小池、フェースを登っていくと右側のスラブ面に誘われそうになったが、ややクライムダウンするとビレイ点を発見。ロープを引き上げる際、浮石がパラパラと下に落ち、真道さんに当たらないようにケア。2P(Ⅳ)真道、小雨が降り始めたが登攀には影響しないと判断し続行。凹角を登りやや左側のフェースを登っていくが、若干左側に行き過ぎてしまい小ハング下でビレイ。3P(Ⅳ+)小池、ルートに復帰するため小ハングを右にトラバースする。その際、右手で掴んだガバホールドが吹っ飛びフォール、幸い残置ピトンが止めてくれ1メートルにも満たないフォールで済んだ。その後ロワーダウンを行いルートに復帰。凹状フェースを登ったが、まだロープが余っていたため左上するスラブ面を抜けバンドへ。しかし、ここでロープドラッグを起こし動きづらくなってしまう。良いビレイ点が中々見つからず、ハイマツ帯のテラスまで上がり引き上げの体制へ。この間にかなり時間を使ってしまった。4P(Ⅳ)真道、引き続きバンドを左上しリッジに出る。熊の岩はガスで見えなくなり小雨が降ったり止んだりを繰り返す。5P(Ⅳ)小池、やや濡れているが岩が硬い快適なリッジを40メートルほど登りピッチを切る。しかし、ここでもロープが岩に挟まり引き上げに苦労する。6P(Ⅱ)真道、簡単なリッジを登りDフェースの頭へ到着。5時間も掛かってしまい、予定していた中大ルートは諦めることにした。小休止後、5・6のコルへの懸垂点に向かう。一昨年の薄い記憶を頼りに何とか懸垂点を見つけ、3回懸垂下降を行い5・6のコルへ到着。気付いたころには八ツ峰には誰もおらず我々だけになっていた。Aフェースを尻目にデポを回収、長次郎谷を下りTSへ。帰幕後には土砂降りになっており、あまり体を濡らさずに済んだ。二人でメロンを半分平らげ、もう半分はお世話になった劔沢野営場の方々に渡した。

登攀総括(小池):懸念していた雪渓の状態は、熱帯低気圧の激しい降雨の影響からか一部怪しい所があったが通過できる程度であったDフェース富山大ルートは技術的には困難に感じることはなかったが、噂通り浮石が多く岩がもろかった。3P目のホールドが取れフォールした際はかなり怖い思いをした。左手アンダー、両足スメアで耐えていたこともあり岩の強度を確かめる余裕がなかった。しかし、今思えばアルパインのシチュエーションでそのような苦しい状態であれば大人しくロワーダウンを行いルートに復帰すべきだったと思う。また、小池はロープドラッグを頻繫に起こし登攀スピードの遅れを招いてしまった。ロープの流れを考えたピッチ切りや岩の形状に配慮したランナー取りをしなければならないと猛省。この失敗を次に活かしたい。

富山大ルート 1ピッチ目

8月13日 気温:14℃ 天気:雨

5:00起床〜6:30出発〜7:00劔御前〜8:50室堂BT

テント撤収時はさほど雨は降っていなかったが、全身雨具を着て出発する。劔御前の下りあたりで雨脚が強まる。そこからノンストップで室堂に向かった。びしょ濡れの中、立山の石碑の前で記念撮影として、下山の喜びを共に分かち合った。

5.総括:

 私の判断とケアの甘さによって、定着合宿が行えず撤退という結果になってしまったことは深く反省したい。申し訳ない。自分が1年生の時には定着合宿は行なえていないため、定着合宿を実施する意義を縦走以上に重要視していただけに、悔いが残る結果となってしまった。日本屈指のアルパインムードを体感できる剱岳で、本格的なアルパインクライミングを経験できる機会を、定着合宿を通じて1年生に与えることは、山歩きだけが登山ではないということやもっと面白い登山スタイルがあることを1年生の早い時期に知ってもらい、彼らの登山のバリエーションを広げ、自分なりの山岳部での目標を見つけてもらうためにとても重要だと感じていた。であるからこそ、定着合宿の代替として、アルパインクライミングを経験できる機会は夏中に必ず設けたい。剱岳は今夏中に登るのは難しそうだが、1年生にはぜひ、登れなかった山があるというのも一つのモチベーションにして今後の活動に励んで欲しい。

 1年生にとっては、2回目の合宿となった。炊事や設営、撤収作業に関して言えば、1年生同士で密に連携をとりながら作業を行っていて、今合宿を通しての成長が見られた。しかし、これだけが生活技術ではない。靴擦れの予防やストレッチをしたり、水分や栄養を十分摂取して、自分の肉体や体調ひいてはメンタルを自己管理することも、厳しく長いストレスフルな山の中での生活における歴とした生活技術の一つである。もちろん初めてのことは上級生が指導しサポートするが、いつまでも上級生におんぶに抱っこ状態ではこの先戦っていけない。今回のように、上級生がケアを怠って、シュラフがビチョビチョになるという事態だって起こり得る。自分の命の最終防衛ラインは、自分の知識・技術と体力とメンタルだという意識を常に持って、今後の活動で厳しい山行を生き抜くサバイバル能力を培っていって欲しい。

 新人合宿に続き今合宿でも、1年生は体力的にも精神的にもきつい思いをしたのではないかなと思う。特に鎌形は一番大変だったと思う。お疲れ様でした。ただ、分かっていると思うが、この夏山縦走合宿が我々の最終目標ではない。ブナたて尾根を降りることが縦走合宿の目的ではない。この合宿を完遂し、もっともっと過酷な厳冬期の山でも問題なく活動できる技術と気力と体力を身に着けることが一番の目的。その意味では、1年生は体力的にもメンタル的にもまだまだだということを十分自覚して欲しい。次の合宿は今回の何倍も厳しく、その次の合宿はさらに厳しくなる。冬山の頂に立ちたいという意志があるのであれば、それなりの覚悟を持って今後のトレーニングに取り組んで欲しい。もちろんそこに対しては上級生が積極的に指導・サポートをしていくので任せて欲しい。

 また、上級生の1年生への指導教育のクオリティーもまだまだ低いと思う。4年生が1年生に対して口を出す場面がまだまだ多いように感じる。3年生は、1年生により近い存在として、来年以降は同じチームを組み、隊を率いる仲間となる1年生を教育する意義は大きい。1年生に教えるという行為が、自分の知識理解につながり、隊を俯瞰することにつながり、そして強いメンバーを育てあげ強固な人的資本を蓄積することにつながる。とやかく言い指導することをためらう気持ちはよく分かるが、誰か一人でも1年生の弱さを許容すれば、それに合わせて隊全体の実力がどんどん下がっていく。山岳部という組織は、1年生のための登山ガイド集団ではない。我々が目指す目標を達成できる水準に、チーム一丸となって1年生を育てあげよう。

(文責:真道)