2020年白馬スキー訓練山行

1.対象:白馬乗鞍岳および天狗原

2.期間:2月15日~2月20日

3.参加者:浅川(4年CL)、小野(3年SL)、田代(2年)、真道(2年)、江口(2年)、小池(1年)、田中(1年)

4.概要

2月15日 東京~白馬駅

栂池高原スキー場行きの夜行バスに空席がなかったため、白馬駅行きの昼行バスを予約していた。そのためいつもより早く部室に集合し、山行のための食料の買い出しを行う。今回は田代が真道のアドバイスをもとに安さにこだわったメニューを考えた。安い鳥胸肉を積極的に採用し、野菜はすべて八百屋で購入した。胸肉と八百屋の野菜の安さに驚愕した。肉をパックから出してそれぞれ袋に詰め替え、卵は田代が考案したガスヘッドの箱を用いた梱包を施し、準備完了。食料と団体装備を五つに分けて1、2年生でじゃんけんをして分配した。

下界最後の食事をとるために松屋へと向かう。バスの時間が迫っていたため各々飯を掻き込む。大盛を注文した小野と真道は想像以上の量に苦戦していた。完食後、急いで部室に戻り最後のパッキングを済ませる。荷物が多いため、路線バスではなく東西線と山手線でバスタ新宿へ向かう。巨大なガッシャを背負い、スキーを首にかけているため、バスターミナルに着くころには汗だくになった。バスに乗り込み白馬駅に移動。到着すると小雨が降っていた。白馬駅に併設されている足湯の部屋で就寝。

いつも通り絶妙なバランス感覚でリフトに腰掛け、ヒュッテへ向かう。

2月16日 栂池高原スキー場にてスキー訓練~神の田圃ヒュッテ

朝目が覚めると外は昨晩と変わらず小雨が降っていた。栂池高原スキー場行きのシャトルバスに乗り込む。ガッシャとスキーを乗せるためにバスの後部座席5席を占拠しスキー場へと向かう。スキー場に到着すると小雨は本降りになっていた。ゴンドラの待合スペースで準備を整えゴンドラに乗り込む。冬山合宿の反省をふまえて、はじめにヒュッテの扉が開錠できるかどうかを確認することになっていた。そのためゴンドラを降りたらすぐにスキー場最上部へのリフトに乗り、ヒュッテへ向かう。リフト券の元を取ろうとみなヒュッテまでの歩行にいつもより気合が入る。ヒュッテに到着するなり開錠を確認する。遭難者がヒュッテを利用したということで、窓ガラスが割られていた。その状況確認を行い、修繕を行った。さらに冬山合宿の終盤で出なくなっていた水道が出るようになっていることも発見した。田中は水づくりをしないで済むと非常に嬉しそうにしていた。一通りの作業を終え、再びゲレンデへと向かう。全員で一度ゴンドラの中間駅にあるバーガーキングで食事をとる。その後、浅川、真道、江口、田中のパーティーと小野、田代、小池のパーティーに分けて滑る。雨が本降りなので全員ずぶぬれになりながら、リフト券の元を取ろうと必死に滑る。15:00にゴンドラの頂上駅前に集合、再びヒュッテへと向かう。ヒュッテの充実した設備で体を温め、服を乾かす。夕食に胸肉と白菜の鍋を食べ、就寝。山の上だからか、胸肉が非常においしかった。

2月17日 神の田圃ヒュッテ~栂池高原スキー場にてスキー訓練~神の田圃ヒュッテ

朝起きると昨日とは一転、晴れていて一同は歓喜に包まれた。今回初採用のガパオライスを掻き込み、出発の準備をする。ガパオライスも非常においしかった。早く滑ろうと急いで支度をしてヒュッテを後にする。林道を抜けるとゲレンデにはまだ誰も滑っておらず、きれいに圧雪された雪面が広がっていた。その日のリフト券を購入すべく全員でゴンドラ山麓へと向かう。リフトが動き出す前の時間であったので、初め無人のゲレンデを滑っていたが、その日最初にゴンドラを利用した外国人の方追いつかれ声をかけられた。「How’d you guys get up here?」と聞かれた。自分たちがゲレンデ一番乗りだと思っていたのに私たちがいたので驚いたのだろう。スキー場の上にヒュッテを持っていることを説明すると、「Oh, I see.」とだけ言って、不満そうに滑っていった。山麓駅に到着すると好天のせいか雪が少なくなっていた。リフト券を購入後、全員でバーガーキングまで滑り、午後からは浅川、田代、江口、小池パーティーと小野、真道、田中パーティーに分かれて行動、ビーコン捜索訓練を行う必要があったため、早めに再集合し、ヒュッテへ林道を帰る。最新のビーコン捜索の方法を実践的な形式で練習をし、ヒュッテに帰る。外は雪が降りだしていた。

スキー場のバーガーキングにヘルメット、サングラス、テムレス、目出帽をしたままハンバーガーを注文する不審人物が現れた。主将と1年生は呆れて笑うことしかできない。

2月18日 神の田圃ヒュッテ~成城小屋~天狗原~ヒュッテ~ビーコン捜索訓練

朝起きると外は荒天で風、降雪共に強い状態であった。朝食をすました後、外が明るくなり天気が回復するのを待つ。しばらくすると行動可能なコンディションになったためヒュッテを出発する。依然として風雪は強く、林道を歩いているとホワイトアウトに近い状態になることが時折あった。成城小屋の西側に回り込み尾根上を進んでいき、天狗原へと進む。標高が増すにつれて風が強くなっていき、視界も悪くなっていったため、天狗原に到達する数十メートル手前で引き返すことを決断。その場でシールを剥がし滑降の準備をする。雪面に立てたスキーやポールは風によってたちまち倒され、さらに雪があっという間に積もるのでシールを剥がすことに少々苦戦する。準備ができると順番に滑降。冬山合宿のときと比較すると圧倒的に雪の量が多く、滑降を妨害する植生がだいぶ少なくなっていたのでかなり滑りやすかった。スキー技術の上達もあり、スムーズに成城小屋、そしてヒュッテまで滑る。ヒュッテに到着すると間もなく山賀コーチが到着される。一度室内でビーコン捜索の手順などの確認をしてから神の田圃で実践訓練を行う。より遠くから捜索を行ったり、複数埋没者の場合を想定したりと、より実践的な訓練を行った。最後に雪洞を掘る手順やコツを伝授していただき、その日の行動を終了した。

荒れた天気の中天狗原へと登る一行

2月19日 ヒュッテ~成城小屋~天狗原~雪洞泊

朝起きると雪は降り止み、新雪が数十センチ積もっていた。全装をパッキングし、ヒュッテを後にする。山賀コーチとはここでお別れする。ありがとうございました。昨日とは違い天気が良いので気持ちよく昨日と同じ道を歩くことができた。順調に歩を進め、天狗原に到着。今夜一晩とまる雪洞を掘る場所を選定し、作業に取り掛かる。浅川、小野、真道、小池グループと田代、江口、田中グループに分かれて雪洞を二つ掘る。戦力差があったためか完成までの時間にかなりの差が生まれる。何とか雪洞を二つ完成させると、アタック装備以外を新居に納め、天狗原下部に積もったパウダーを楽しむべく出発する。1本滑ったところで江口が寒さを訴え浅川とともに雪洞に戻る。二人に水づくりをまかせ、残りのメンバーで2本目の滑降を行う。しかし、滑降開始直後に小池が冬山で痛めた足首の痛みを訴え、全員で雪洞に帰る。帰幕後、各雪洞で食事をとり、就寝。今回の雪洞泊はしっかりとした雪洞と寝袋やエアマットのような装備があったおかげで非常に快適に過ごすことができた。雪洞の実用性を知るとともに普段のテントのありがたさがよく分かった。

青空のもと今晩の寝床を掘る。

2月20日 雪洞~白馬乗鞍岳~成城小屋~ヒュッテ~白馬駅~東京

朝起きて各自雪洞で朝食を済ませる。アタック装備をガッシャにつっこみ、白馬乗鞍岳を滑降するべく雪洞を出発する。前日足の痛みを訴えた小池と付き添いの浅川が雪洞に残った。歩行技術の向上と積雪量の増加のおかげか、あっという間に白馬乗鞍岳の上部まで登ることができた。最上部はクラストしておりスキー歩行が困難であった上、滑降が難しいと判断し、最上部まではいかずに滑降することにした。天気が良く、絶好のスキー日和であった。各自シールを剥がし、滑降の準備をする。準備ができると各々の課題をもって滑走。パウダーの層は少々薄かったが、気持ちよく滑ることができた。登りも早かったが、下りはさらに早く、すぐに雪洞に帰還。全装をパッキングし、雪洞を潰す。下山後の食事をモチベーションにしながら天狗原を後にする。全装の重さに腿が悲鳴をあげるが、止まってしまったときの面倒くささと天秤にかけて、我慢する。悶えながら下ってくる私たちに登ってくる外国人のスキーヤーが珍獣を見るような目を向けてきた。真道は彼らの前で転倒して、「Are you alright? Do you need help?」と本気で心配されていた。林道で全員集合してからヒュッテへ向かう。小屋締め作業を行い、ヒュッテを後にする。さらにスキー場にむけて林道を下る。その途中、ノルディック複合日本代表の渡部暁斗選手がクロスカントリースキーを履いて登ってきて非常に驚いた。胸にはANAなどのスポンサーの名前が入っていて、ただものではないオーラを出していた。そのままスキー場をスキー客の視線をいつも通り集めながら滑降し、ゴンドラ山麓駅に下山した。栂の湯温泉で体を下界にふさわしいもののにし、白馬駅へ向かう。バスの時間ぎりぎりになりながら藤屋食堂で飯を掻き込む。バスに乗車し、帰京。

5.総括

今回の山行の主な目的はスキー技術の向上と雪洞泊の体験であった。冬山合宿では積雪が少なかったため例年と比べて滑走できた距離が短かったこともあり、今山行で補填できればという意図もあった。ゲレンデで練習する時間を多く確保したためか、全員縦走に使えるくらいのスキー技術が身についたように見えた。春山合宿で北海道に行く計画はコロナウイルスの影響で中止になり、今回身についた技術をすぐに実践する場はなくなってしまったが、今後の活動にいきてくることは間違いないだろう。

雪洞を掘るだけでなく、そこで生活する技術も実践することができた。