2019年度新人合宿

1.対象:北アルプス涸沢

2.期間:2019年6月10日~6月15日

3.参加メンバー:浅川(4年CL)、小野(3年SL)、中島(4年)、江口(2年)、真道(2年)、田代(2年)、小池(1年)、辻野(1年)

4.概要

① 6月10日 17:00部室集合~21:00部室出発~22:30夜行バス発

部室にて最終の個装チェックを終えた後、団装と一緒にパッキングし、雨の降る中バスタ新宿へ出発。普段はバスで向かうところバス停までの歩きで装備が濡れることを避けるため、今回は東西線と山手線を乗り継ぎアプローチする。夜行バスは平日であること、天候が芳しくないことから空席が目立った。

② 6月11日 6:00上高地~6:50明神~7:40徳澤~9:10横尾~10:30本谷橋~14:00涸沢~14:30TS幕営

雨の予報であったが幸い上高地での天候は悪くなく岳沢の向こうには残雪を頂く奥穂高岳を望むことができた。途中徳澤園への挨拶を挟み、横尾にて事前の勉強会で確認した読図を行った。1年生は二人ともよくシステムを理解しているようでスムーズな山座同定が出来ていた。本谷橋から涸沢に登り始めると谷筋に雪が現れ始めたため、1年生1人につき上級生を2人つけキックステップで慎重に登る。涸沢ヒュッテ直下の斜面でキックステップの練習をし、その後1,2年生でヒュッテまで競争を行う。 小池は基礎体力は十分なようで1年生でありながら2年生によく追随していた。また2年生も着実に体力をつけているようで昨年の新人合宿から大きな進歩が見られた。

幽玄なる涸沢の門番

③ 6月12日 3:30起床~5:15出発~5:30訓練開始~15:00訓練終了~15:15帰幕

 (訓練内容:キックステップ2hr アイゼン歩行2.5hr 滑落停止初期停止1hr fix通過1hr 懸垂下降1hr 確保三種1hr)

 出発時にはかろうじて雨は降っていなかったものの1日雨天の予報なので雨具を着込み出発。幕営地から10分ほど歩いた傾斜地にて訓練を開始する。スノーバーを用いて1辺20mほどのスクエアを雪上に作り、登り下りトラバース等一通りキックステップ、アイゼン歩行を行う。ここでは1年生1人に対し上級生が2人付く形式をとった。歩行訓練の後、初期停止及び滑落停止訓練を実施。スリップしないことが最も重要ではあるが、ピッケルの持ち手を変化させる等し、様々な状況で対処できるよう訓練を行った。休憩をはさみ、2年生に張らせたロープでfix通過及び懸垂下降訓練を実施。1,2年生ともにシステムは理解しているがスピードはまだまだのようで要所でもたつく様子が見られた。時間が余ったため計画を前倒し確保三種(肩絡み、腰絡み、スタンディングアックスビレイ)を訓練した。座学で学んだ通りとはいかず自分の身にかかる強い衝撃に1年生は難儀していたが、訓練が終わるころにはコツをつかんだようで滑落する上級生を止められるようになっていた。ここで訓練を切り上げテントに戻り1年生には天気図を取らせる。下界での訓練が実ったようで気圧配置や等圧線など上手く情報を書きまとめられていた。

④ 6月13日 

・訓練隊:3:30起床~5:00出発~5:20訓練開始~15:20訓練終了~15:30帰幕

    (訓練内容:アイゼン歩行5hr スタカット6P 3hr 懸垂下降1hr)

 訓練場所は昨日よりも急傾斜を求め、五・六のコル下の尾根状地形で行った。開始当初は1年生が斜面に文字通り腰が引けていたが、訓練を進め斜面に慣れると急傾斜の硬い雪面の下りも臆せずこなし、歩きも安定してきたようであった。一通りのアイゼン歩行を終えた後、小豆沢の登降を想定しアタック装備を背負った状態で訓練を再開する。やはり空身とは勝手が違うようでアイゼンの刃を雪面に噛ませるのに苦労を要しているようであった。明日以降の訓練で重点的に行うべきところであると言える。これまで新人合宿では雪上歩行訓練をすべて空身で行ってきたが、より本番の状況に近い訓練が必要であることが痛感された。その後同一の斜面にて1年生同士を組ませスタカットを行う。システムの理解が不十分であり致命的なミスも散見されたが、指摘を行うたびに改善が見られ6Pの後にはミスなく行えていた。残る課題はスピードへの意識だろう。スタカット訓練を終えたタイミングで涸沢岳隊と合流。白出のコル直下で使うであろう懸垂下降を2P浚い訓練を終了する。

・涸沢岳隊:5:30出発~8:00白出のコル~9:00山頂~10:00下山開始~14:00合流

白出のコルまでは順調なペースで登り、2ピッチで到着。コルから涸沢岳までは江口の訓練のため、わざとロープを出すことにした。支点になりそうな岩を探しながら登るが、結局見当たらずそのまま登頂。快晴無風で白山から富士山まではっきり見渡せた。下りは江口が前を向いて下る自信のある傾斜まではロープを出すことにした。江口のルート工作と下りの練習を兼ねて半マストで50mロープ一杯下る。6ピッチ下ったところ(ザイテングラードの末端手前くらい)から傾斜が緩くなり、ここからは下れそうというのでロープをたたむ。念のため小野と中島が下に入った。下るスピードは2年生としては少し遅いが、安定はしていた。そのまま五、六のコルへと向かい雪訓組と合流した。

訓練を見守る奥穂高岳

⑤ 6月14日 3:30起床~5:00出発~5:30訓練開始(アイゼン歩行5hr)~11:00スタカット(8P)開始~15:00五・六のコル~16:00帰幕

 五・六のコル往復のみでは時間に余りが出来すぎるため、往復を行う前に昨日と同一の訓練場所でアイゼン歩行を行う。昨日の訓練において1年生の課題として出たアタック装備を背負っての雪上歩行であるが、前日長時間にわたり雪上を歩き続けた成果が見られ、雪の締まった急斜面の下りにおいても安定した歩行技術を会得していた。昨年度課題としてあった雪上歩行技術であるが、例年以上にアイゼン歩行に時間をかけた結果、歩行技術については十分に奥穂アタックが可能な程度には達しているようであった。歩行訓練の後、スタカット訓練を兼ね1年生同士を組ませ五・六のコルに向けて登り始める。昨日のような致命的なミスは見られなかったが、やはりスピードに難があるようだ。コル直下付近において辻野がシャリバテしペースが極端に落ちるも何とか発破をかけコルに至る。しばらくコルで休憩した後コルから2P懸垂下降をする。計画ではここでシート搬送をする予定であったが、時間が無くなってしまったため訓練を終了し帰幕。

雄大な涸沢カール
日焼けが気になる謎の部員X

⑥ 6月15日 2:30起床~4:00出発~7:30屏風の頭~9:00スタカット訓練(4P)~10:30搬送訓練~11:30下山開始~16:30上高地バスターミナル

 昨日の天気図より、低気圧の接近に伴い荒天となる予報のため強風の予想される3000mの稜線に1年生を連れて行くのは厳しいと判断し、アタック対象を屏風の頭に変更する。屏風のコルまでの夏道は残雪期通行ができないためコルに突き上げる雪渓を登ることにする。コル直下はロープを出すほどではないが傾斜も急となり1年生にとっては実践的な雪上歩行の確認の機会となっただろう。稜線に出たのちは雪もほとんどついていないためアイゼンを外し歩く。稜線は急傾斜の登降や脆い岩場の通過など新人合宿にしては緊張の強いられるルートであったが、1年生はともに登山経験者ということもあって安定した歩行を見せてくれた。屏風の頭につく頃には降雨も激しくなってきたため山頂で写真を撮影したのちすぐに下り始める。屏風のコルからの下りは懸垂下降をするほど急ではないためそのまま歩いて下り、その後涸沢ヒュッテに向けて登り返す。ヒュッテへの登りの途中で昨日課題としてあったスタカットの訓練を行う。昨日の長時間にわたる訓練の甲斐あって目立ったミスもなくスピードも目覚ましい改善が見られた。スタカット訓練後、前日やり残した雪上搬送訓練を行う。要救助者をツェルトとロープ1本で持ち手を作り搬送する方法を全員で確認した。翌日はさらに天候が悪化するため奥穂高岳への再アタックは困難とし、ここで下山を決定する。最終バスの時間が近いためテント撤収の後、涸沢を足早に後にする。途中徳澤園への下山報告を挟み、上高地バスターミナルに下山。

屏風の頭にて部員勢揃い