2017年度新雪期合宿

1.対象:富士山

2.期間:2017年11月23日(木)~27日(月)

3.参加メンバー:4年福田(CL)、2年中島(SL)・浅川、田中OB(28年度卒)

4.行動詳細:

11/23(木) 雨のち晴れ
11:00集合~14:00発15:35新宿バスタ発=17:30御殿場駅=タクシー=19:30新5合目登山口
昨年度の出発日は東京では54年ぶりの11月中の積雪に見舞われたが、今年は雨。新雪期合宿出発日はなかなか天気に恵まれない。11時に集合し、パッキング。グローバルエデュケーションセンターからパルスオキシメーターをお借りすることができ、医療パックも整った。14時すぎに部室の掃除を終え出発。雨は上がっていた。昨年までは小田急ハルク前から出ていた御殿場行きのバスは新宿バスタ発着となっていた。祝日のためか、予定から15分ほど遅れて17時半に御殿場駅到着。夕食と明日の朝食の購入を済ませてタクシーに乗り込んだ。問題のゲートは開いており、新5合目登山口までタクシーで入ることができた。4人で一台に乗ったため4370円也。登山口には他に明治大がテントを張っていた。また、新5合目駐車場には車が5台ほど停まっていた。駐車場の隅にテントを張り、20時半に就寝した。

11/24 (金)晴れ4℃
6:30出発〜7:30次郎坊〜10:006合目小屋跡〜12:002900m〜13:306合目小屋跡にて幕営完了
5時に起床し、各自朝食を済ませる。登山口横のバス停に不要な荷物をデポし、6時半、日の出とともに出発。快晴による放射冷却のため明け方こそ寒かったものの、朝日がもたらした暖かさの中砂礫の道を良いペースで進み、先行していた明治大を追い抜いた。例年通り6合目に幕営するらしい。長く退屈な砂礫の道も次郎坊手前で終わりを迎え、雪道へと変化した。雪は風に叩かれ蹴り込みが効かないほどに締まっている。それでも歩行訓練を兼ねつぼ足で進む。2100m付近からいよいよ山肌全てが堅雪に覆われだしたためアイゼンピッケルを装着。TSまででアイゼンを履いたのはここ四年で初めてであった。アイゼンの爪だけが雪面に刺さる硬さで快適そのもの。夏道の登山道沿いに順調に高度を稼ぎ10時に6合目小屋跡に到着した。この頃になると風も出始め、時折耐風姿勢で凌がなければならないほどだった。また浅川に若干疲れが見え始めていたので、順応も兼ねて20分休憩をとった。6合目小屋跡より上は先ほどまでとは打って変わって膝下のラッセルとなり、ペースが落ちる。加えて南西から吹き付ける風も勢いを増し、吹き上がる霰と相まって我々の進行を妨碍してくる。それでも雪の状態から滑落の危険は低いと判断し、なんとか7合5勺を目指して前進。12時に2900m付近に到着した。7合の日の出館を目前に捉えていたものの、強風のため幕営困難と判断し、6合目小屋跡に戻ることにした。6合目小屋跡の吹き溜まりを整地し、なんどもテントを強風に煽られながらもやっとの思いで設営完了。この設営作業中に中島のザックとその下に置いていたテントの外張りが突風に飛ばされ、あわや紛失の危機となったが、中島がダイビングキャッチし事なきを得た。しかし、ちょうど持っていたテントポールから手を離したためにポールは奈落の底へ落ちていってしまった。ザック等のセルフは常にとるべきであった。※ア設営後はTS周辺で雪上訓練をする予定であったが、激しさを増す風とホワイトアウトに近い視界不良のため断念した。6合目に幕営予定だった明治大は上がって来なかった。17時半に夕食をとり、就寝。風は一晩中テントを潰そうとするかのように吹き続けていた。

11/25(土) 晴れ-8℃
7:306合目小屋跡出発〜8:30砂走り館〜10:45銀明水前〜11:15剣ヶ峰〜12:00〜14:00大垂水沢にて雪上訓練〜14:306合目小屋跡TS
6時15分出発の予定で起床したが、相変わらずテントが飛ばされる恐怖を覚えるほどの暴風が吹いていたため、待機。7時頃外の様子を確認すると、快晴。山頂部に雪煙がまっているものの条件は悪くなさそうだ。とりあえず雪上訓練のため大垂水沢へ向かい、余裕があればアタックすることにして出発。昨日はラッセルを強いられた道も、アイゼンのよく効く富士山らしい道になっていた。時折霰とともに吹き付ける強風に耐えながら、長めに1ピッチ歩き、1時間で砂走り館に到着。ここから上は下部の積雪状況からは想像がつかないほど岩や砂が露出していた。やはりかなりの強風が吹き荒れていたことが分かる。しかし、当時は落ち着いていたので、アタックを決意した。それでも時折吹く風に注意しながら夏道沿いに登っていく。クラストしているところはなく、頂上直下のルンゼまで登山道に砂地が露出している箇所がところどころみられた。田中OBに一年生役を演じてもらい、二年生に声かけなどのケアの仕方を練習させながら歩くが、なかなか声が出ない。来年度に向け不安が残る。それでも歩行は安定しており、2ピッチで銀明水前に到着。
6合目からのスピードも及第点か。11時すぎに快晴の剣ヶ峰に登頂し、昨年のリベンジを果たした。山頂付近も雪がかなり少なく、御鉢の積雪は訓練には不十分そうに見えた。途中大垂水沢の積雪は確認していたので、大垂水沢3400m付近で訓練することに。訓練場所付近にはツボ足歩行、アイゼン歩行それぞれに適した斜面があった。12時に訓練を開始し、二年生が田中OBに指導する形式でツボ足、アイゼンでのスクエア歩行を計1時間半、初期停止滑落停止訓練を30分行い、14時下山開始。歩行、滑落停止共に下級生に教えられるレベルでは全くなかったが、14時を下山開始のリミットとしていたため、やむなく下山した。風も再び出始めたので30分で6合目小屋跡TSまで一気に下った。帰幕後は、行動中問題視していたアイゼン着脱の訓練を行った。登頂の成果の一方で、課題が多く見られ複雑な気持ちでこの日の行動を終えた。

11/26(日) 晴れ-5℃
07:30BC出発~BC周辺にて雪上訓練(07:40スクエア歩行~09:00アンカー構築訓練・確保三種~10:00滑落停止訓練~11:30スタカット~13:15コンテ~14:00終了)
今日も日の出前の暴風のため、出発を遅らせる。6時発の予定が7時半になった。相変わらず断続的に風が吹き付けていることに加え、TS付近の雪面の条件が大垂水沢と大差ないことから、TS周辺での訓練とする。7時半から20m×20mのスクエア内でツボ足での歩行訓練を1時間半みっちり行った。感覚が戻ってきたのか二年生の歩行も確度が高くなった。その後はスノーバーでのアンカー構築訓練と確保三種を昨日同様二年生が指導する形式で1時間行った。ポイントをしっかり押さえて確実にこなしていた。10時からはTS下の固い斜面で滑落停止訓練にうつったが、二年生はスピードがかなり出る固い斜面での停止に難儀していた。前提として、転ばない歩行を固めることが重要だと実感してもらえたようだ。11時半頃田中OBが下山開始。田中OBを見送った後は中島、浅川がザイルを組み、スタカット×6pでロープワークの確認。ミスがないのはもちろん、これまでになかったテキパキしたスピード感が見られた。今年度の合宿で意図的にルート工作をさせてきた成果が出ていたように思う。来年度を見据え、今日の仕上げに稲葉コーチ直伝のコンテを二年生に教えて、14時訓練終了。明るいうちにビバーク訓練用のビバークサイトを作ってから帰幕。小屋跡の吹き溜まりに腰掛けられる程度の深さの縦穴の半雪洞を掘った。夕食を済ませて18時に全員でビバークを開始。ビバーク開始早々雪洞の上に張っていたツェルトが破れ、暴風に晒される。それでも御殿場の夜景を慰みになんとか耐えようとしたが、22時にテントへ退却した。テントに転がり込み、そのまま就寝。

11/27(月) 晴れ −3℃ 
06:00〜09:00訓練〜10:00BC撤収完了〜10:40新5合目登山口〜12:00JR御殿場駅 各自帰京
4時45分に起床すると、風も弱い穏やかな朝だった。6時に訓練を開始する頃にはさらに収まり、絶好の登山日和となった。前日の訓練でロープワークには問題がなかったため、雪上歩行の総仕上げとしてスクエア歩行を実施。朝一の硬い斜面でアイゼン歩行、ツボ足歩行をそれぞれ45分ずつ行った。今年はアイゼンを付けて歩くことが多かったためか、よく歩けるようになっていた。その後、夏山定着で行った懸垂下降、ビレイ時の仮固定や引き上げシステムをおさらいした。忘れていたものはしっかり復習しておいて欲しい。9時すぎに訓練を終え、テントを撤収。10時に下山を開始する。快晴のため気温が上がり、雪も緩んでいたのでツボ足で下り始めたが、大砂走りルートに合流する手前からは雪面がかなり硬く、滑りそうになる。結局アイゼンを装着して下ることに。例年大砂走りは砂地が柔らかくツボ足で一気に下れるのだが、今年は非常に硬かったため、アイゼンを装着したまま、次郎坊まで積雪をつないで下りた。その後は駐車場まで砂地の道をひたすら走り、10時40分に新5合目登山口に到着した。24日12時にゲートが閉まったらしいので、ゲートまで歩いてタクシーに乗り、御殿場駅へと下りた。御殿場で美味しいかつ丼をかきこみ、下界に降りてきたことを実感。その後各自帰京した。

5)総括
今年度は入山直前のまとまった降雪のおかげで、雪上訓練は例年よりも効果的に実施することができた。それに加えて、連日の強風のなかでの行動は冬山シーズンに向けての良い経験になった。また、昨年度は到達できなかった剣が峰にも少ないチャンスを捉えて登頂することが出来た。これらの点から天候に恵まれた合宿であったといえよう。
天気にこそ恵まれたものの、今年度は一年生がおらず、上級生も少なかったことで例年と異なることが多かった。それゆえ訓練の内容や二年生の扱いなども例年と変更せざるをえず、難しさも感じていた。そんななかで田中OBの参加は上級生不足を補い、目の行き届いた指導をもたらしてくれた。ありがとうございました。来年以降も上級生不足が予想されるが、OBの力を借りるなど工夫しながら行ってほしい。
さて、上述のように天気、OBの力を借りて完遂した合宿であるが、我々自身はどうであっただろうか。今回の目的に二年生の強化を上げていたが、ロープワークや歩行などで今年度の取り組みの成果が実感できる進歩がみられた。これまではみられなかったリーダーシップについても、今回は特に中島に意識の改善が感じられた。訓練でも新たな技術や詳しい理論についての質問を自分からするようになったし、アタック中も風向の変化や、地形など視野を広く持っていた。来年度に向けて多くを吸収しようとする姿勢がみられたのは非常に喜ばしいことであった。その一方で、二年生同士のコミュニケーションや生活技術、体力などはまだまだ未熟であると言わざるを得ない。よかった点は伸ばし、未熟な点は補っていかなければならない。
何はともあれ冬山シーズンのスタートである新雪期合宿を無事完遂することができた。このタイミングで兜の緒を締め直し、今後も春山にむけて邁進していこう。