2024年度新人合宿

1.日程
2024年6月9日(日)~6月15日(土)

2.対象
北アルプス 涸沢カール・奥穂高岳

3.メンバー
4年 岩波(C.L.)  3年 吉澤(S.L. 医療・気象)、上村(装備) 2年 大元(食料) 1年 金子、柴山、田代(6/9~6/13)、日高、御山、山賀コーチ(6/10~12)、真道コーチ(6/11~13)

4.概要

6月9日(日) 天気:曇りのち雨

17:00部室集合~20:00 部室出発~21:05バスタ新宿~0:23松本バスターミナル~0:42就寝

17時に部室に集合し、1年生の装備チェックとパッキングを行う。1年生の装備チェックは合宿準備の時と出発日の前日にも行っていたが、初めての合宿であるので、入念に行う。団体装備の重量は1年約8.5㎏、2年生以上9~10㎏であり、総重量は30㎏以下であったと思う。部室に高田OBが来てくださり、差し入れとして3万円も頂いた。ありがたく頂戴し、20時に部室を出発し、バスタ新宿に向かう。21時発の高速バスに乗り松本には0時半前に到着した。バスターミナルから松本駅に移動しいつもと同じく駅ピアノの前で就寝。

6月10日(月) 天気:曇りのち雨 気温:20℃(上高地)

5:45起床~6:31松本駅出発~7:01新島々駅~8:15上高地~8:54出発~9:41明神9:50~10:41徳澤園11:10~12:09横尾山荘12:17~12:39横尾岩小屋跡~13:20本谷橋13:32~16:15涸沢~20:30就寝

6時前に起床し、6時半松本発の始発列車に乗って新島々駅まで行き、バスに乗り換え上高地に向かう。8時15分に上高地に到着し、そこで山賀コーチと合流した。上高地で水汲みやスノーバーやピッケルの外付けを済ませ、9時前に上高地を出発。大元を先頭に御山、田代、吉澤、金子、上村、日高、上村、柴山、岩波、山賀コーチのオーダーで歩く。だいたいコースタイムと同じぐらいのペースで出発から 1 時間弱で明神に到着した。1年生の多くが肩を痛がっていたが、初めてのガッシャ―は誰でもそうなるものだ。田代がやや疲れ気味であったので御山と順番を入れ替え
る。10 時前に徳沢に到着し、上條社長からアイスクリームとピザを頂く。おいしいものを食べて元気を貰い、横尾に向かう。横尾には徳澤から 1 時間ほどで到着し、10 分休んで出発した。横尾を過ぎたあたりから、田代の疲労が顕著になり先頭の大元との間が開き始める。大元には間が開かないようにペースを調整するように伝える。本谷橋までは何とか全装で歩いていたが、本谷橋直後の急登で完全にバテてしまったので、田代の団装と個装の一部を荷抜きして上級生に分配した。1950m付近で初めて雪が出てきて、涸沢の直下まで数か所の雪渓の通過があった。1 年生にはピッケルを出させた。本谷橋を出発して 1 時間ほど歩き休憩したが、その後から 1 年生全体の疲労が目立ち始め歩く速度が低下する。1年生を励ましながら登っていく。2100mを過ぎたあたりから雪の斜面になったが、斜度は緩く、踏み跡もしっかりしている為、アイゼンをつけずにツボ足で登った。16 時 15 分に涸沢に到着。計画では少し訓練をする予定であったが、時間と 1 年生の疲労具合を考慮し訓練はせずに幕営し、1 年生に生活技術を教えながら夕食を作る。テント割はスタードームには岩波、上村、金子、柴山、日高、山賀コーチ、エスパースには吉澤、大元、田代、
御山とした。夕食を食べ 20 時半に就寝した。

 ↑本谷橋。雪はない。

6月11日(火) 天気:晴れ 気温:8℃

4:30起床~5:50出発~6:10雪上訓練開始~15:00訓練終了~15:20帰幕~20:00就寝

4時半に起床した。4時には外はすっかり明るかったので明日からは起床時間を30分早めることに決めた。1年生は初の朝の炊事であったが、起きてから火をつけるまでの時間や、炊事の手際、個装を探す、アイゼンをつけるスピードなど課題はたくさんあった。結局目標の1時間から20分オーバーしてしまった。上記の問題点とその解決策を1年生に伝え、明日は間に合わせるようにと指導した。5時50分に出発し、雪上訓練は前穂側の落石のリスクが少なそうな斜面を選んで行った。田代が訓練場所に行くまででかなりバテており、体調が悪そうに見えたので、午前中は休養させることとし、テントに返した。雪上訓練はまず初期停止を練習した。その後は1年生1人に対して上級生1人が付き、アイゼン歩行2時間、ツボ足1時間を行った。まず、形を覚えさせた、次に蹴りこみの強さをあげていく事にした。3時間行った結果、まだ蹴りこみは弱いが型は身についてきたと感じた。午前中の最後は滑落停止を行った。1時間で全員及第点のレベルまで達することができたので終了した。訓練中に横尾から登ってきた日大山岳部に会った。午後は御山と金子、柴山と日高のペアに分けてスタカットと歩行訓練を入れ替わりで2時間ずつ行った。スタカットはまだ1つ1つの動作が遅く、ミスも多いのでまだ練習が必要である。田代の体調もやや良くなったので、午後は上村についてもらい歩行の型を教えた。15時に訓練を終了して帰幕した。18時に真道コーチが涸沢に到着された。エスパースに入ってもらった。その後夕食を食べ、明日は4時起きとし20時に就寝した。

↑歩行訓練中の新人4人→

 

6月12日(水) 天気:晴れのち小雨 気温:4℃

4:00起床~5:10出発~5:30雪上訓練開始~16:10訓練終了~16:30帰幕~20:00就寝

4時に起床した。出発まで1時間を目標としたが、1時間10分かかってしまった。昨日に比べて手際は良くなっていたが、まだ起きてから火をつけるまで6分かかっている、朝に個装を探すなどまだまだ改善の余地があると感じた。田代は頭痛や吐き気などの症状を訴えており、訓練は無理と判断し、テントで休養させることにした。雪上訓練は昨日と同じ場所で行った。まず歩行訓練を2時間行った。歩行は全員及第点に達したと判断し、終了した。歩行訓練の終了後、下山する山賀コーチと別れた。次に昨日と同じ金子、御山ペアと柴山、日高ペアでスタカット訓練を行う。準備は10分以内を目指したが、2回チャレンジしたが両ペアとも間に合わなかった。また、スタカット自体も初めはミスが多く時間もかかっていた。しかし、柴山、日高ペアに関しては3p目にミスなく20分以内に1pを行うことができていた。一方で金子、御山ペアは1pに30分かかるなど、まだまだだった。特に御山はATCの向きなどスタカットのシステムを度々間違えており時間がかかっていた。スタカット終了後は懸垂下降の練習を行い、16時には訓練を終了し、帰幕した。夕食後、上級生と真道コーチで明日以降の行動について話し合った。まず田代については、これ以上標高の高い涸沢にいても体調の改善が見込めないことから、明日の朝一で真道コーチと一緒に下山させることにした。そして、御山はスタカット、懸垂、滑落停止に日高は滑落停止、金子は懸垂下降に課題があり、また今日する予定であったFix通過ができていないという現状を確認し、それを踏まえ明日は朝の3時間でFix通過とそれぞれの課題を練習させ、全員が合格できたら5,6のコルに出発することにした。そして、上記の事に加えスタカットのタイムをミスなく全員が切れることを奥穂高岳アタックの条件とすることを決めた。この話し合いの内容を1年生にも伝え、明日は特に気合を入れて頑張るように伝え、20時に就寝した。

↑スタカット練習中

6月13日(木) 天気:曇りのち雨 気温:4℃

4:00起床~5:10出発~5:30雪上訓練開始~8:30訓練地出発~12:10 撤退~13:10帰幕~20:00就寝

4時に起床した。朝の炊事については起きてから火をつけるまでは4分に短縮されたが、依然として朝に探し物をするなど、生活技術に関してはまだまだである。5時10分に出発し、5時半に雪上訓練を開始した。初めの1時間は柴山と御山のペアでスタカット、金子と日高には懸垂下降の復習をさせ、次の1時間では全員で滑落停止の復習とFix通過の練習を行った。全員昨日までと比べるとかなりうまくなっていた。特に御山は昨日とは別人のように改善していた。全員5.6のコルに行ける基準を満たしていると判断し8時半に5.6のコルに向けて出発した。ある程度の所まではアイゼン歩行で登り、斜度が急になってきたところでロープを出してスタカットを開始した。柴山と御山ペアに吉澤と上村、金子と日高ペアに岩波と大元がつき訓練を行った。両ペアともミスなく20分以内で1pを終わらせることができた。昼に近づくにつれどんどん雲がかかってきており、5.6のコルまであと50mほどの地点で雨が今にも降りだしそうであったので、今やっているピッチでスタカットを切り上げ、スタカットのペアごとに下山を開始する。柴山と御山ペアは急な斜面を雨が降る前に下りきることができたが、日高と金子は急な斜面の途中で雨につかまってしまった。1年生をケアしながら下りきる。13時には帰幕し、テントで物乾を行う。朝、懸垂下降や滑落停止に問題がなかったこと、5.6のコルには行けなかったが柴山と御山ペアは9p、金子と日高ペアは8pスタカットを行うことができ、タイムもクリアしていたので、明日に奥穂高岳アタックをすることは可能と判断した。田代が下山したので金子がスタードームからエスパースに移動した。夕食を食べ、明日に備え20時に就寝した。なお、田代は朝に訓練隊と別れ真道コーチと一緒に下山を開始した。標高を下げると体調も回復したらしく、順調に高度を下げ12時半に上高地に下山を完了した。(9:14横尾~12:38上高地)

↑5,6のこるコルへ向かう

6月14日(金) 天気:晴れ 気温:8℃

4:00起床~5:10出発~6:00雪上訓練開始~7:00訓練地出発~8:52白出のコル(穂高岳山荘)~10:38奥穂高岳山頂10:50~12:20白出のコル12:30~16:30帰幕~20:30就寝

4時に起床した。朝の炊事はこれまでで一番手際よくできていた。スタードームの方は時間内に出発準備をする事ができた。エスパース組は遅れていたので明日こそは間に合わせるように伝える。天気は良く、昨日に比べて気温も高かった。まず、小豆沢の下部でアイゼン歩行と滑落停止を復習した後、7時にアタックを開始する。オーダーは大元、金子、御山、吉澤、日高、上村、柴山、岩波とし、滑落の危険性がある場所は1年生のフォールラインに上級生が入り警戒した。雪はやや腐っていた。基本的につづらで登り、一度の休憩をはさみ9時前に白出のコルに到着し、ここでアイゼンを外した。山荘の直後の梯子に雪はなかったが、その後斜度40度ほどの雪壁が出てきた。金子と柴山は雪壁を避け横の岩稜帯を登らせたが、浮石が多く危なかったので、残りはアイゼンをつけ雪壁をクライムアップさせた。その後は夏道沿いに登り、10時半には奥穂高岳の山頂に到着した。山頂で休憩し、記念写真を撮り、10時50分に下山開始。行きの雪壁は横の岩稜帯に懸垂支点があったが、狭くて全員のセルフが取れないので、上級生が先に降り、1年生にはクライムダウンをさせた。12時20分には白出のコルに戻りここでアイゼンを履いた。コルからは懸垂下降を行った。あらかじめロープとスノーバーを持った大元が一番先に下降し、下降したら後続を待っている間に次の懸垂支点を作ってもらった。初めは50mロープ1本で3pほど懸垂したが、たいして距離が稼げない為、最後はロープを2本つなげて懸垂をした。最後の懸垂終了後、岩波と吉澤でロープをたたみ1年生と上村、大元を先に下らせ小豆沢下部で確保三種の練習を行った。練習終了後、幕営地に向け下山し、16時に帰幕。涸沢ヒュッテの方からコーラとパンを頂きお礼を言いありがたく頂戴した。アタック成功の喜びをかみしめつつ夕食を食べ20時半に就寝した。

↑山荘直後の雪壁
↑小豆沢の下り
↑奥穂高岳山頂にて

6月15日(土) 天気:晴れ 気温:9℃

4:00起床~5:50出発~6:53本谷橋7:03~7:50横尾山荘8:01~8:50徳澤園9:15~10:40上高地=下山

4時に起床した。訓練はすべて終了したのでまっすぐに下山することにした。5時15分の出発を目指したが出発できたのは5時50分と大幅に時間をオーバーしてしまった。まだパッキングが遅く生活技術に関してはまだ改善していく必要があると感じた。涸沢ヒュッテの直下の下りは、斜度が緩く、踏み跡もあったのでピッケルを出し、アイゼンは付けずに下った。雪が腐っていたのでトレースの無い場所の方が歩きやすかった。1年生は滑りやすい雪にやや苦戦していた。その後は順調に高度を下げ1時間ほどで本谷橋に到着した。途中で涸沢に上がる途中であった日大山岳部とすれ違いお互いにエールを交わす。横尾には8時前に到着し、休憩した後徳沢を目指す。徳澤園ではまた、アイスとピザを頂いた。徳沢でいったん解散し、徳沢から先は11時25分のバスに間に合うように各自のペースで上高地まで向かった。11時には最後尾も上高地に到着し、新人合宿を終了した。上高地からはバスと電車を乗り継ぎ、松本に向かう。風呂に入ったあと、駅前の王将で高田OBから頂いたお金でご飯を食べ、夜のバスで各自帰京した。

↑涸沢直下の雪渓

5.総括

1年生5人を迎えて、現役合計9人と、山賀コーチ、真道コーチに参加頂き、合計11人で挑んだ新人合宿。まず無事に下山することができ、全員での登頂は叶わなかったが、奥穂高岳の山頂に立てたことはとてもよかった。合宿中1年生は苦しいことも多かったと思うが、とても良く頑張っていた。特に、12日の夜には上級生誰もがアタックは不可能だと思っていたが、13日の頑張りは素晴らしかった。しかし、生活技術に関してはまだまだ改善の余地がある。夏山では時間に間に合うように頑張ろう。これからも同期5人力を合わせて困難を乗り越えていってほしい。
次の合宿は夏山合宿だ。行動時間的には新人合宿よりハードである。夏山に向けて体力や技術を全員で強化しつつ、今回良かった点は続け、悪かった点は改善し最高の夏山合宿にしよう。(文責:岩波)