2021年9月 穂高登攀山行
対象:北穂高岳東稜、前穂高岳北尾根、滝谷ドーム中央稜
日程:2021年9月4日〜9月10日
参加メンバー:4 年:真道 C.L.、田代 S.L.、3 年:小池、田中、1 年:壬生、岩波
概要:
9月4日
部室で装備チェックとパッキングを終え、バスタ新宿より上高地へと向かう。
9月5日
気温:20℃(上高地)、天気:晴れ
5:45 出発〜6:37 明神〜7:20徳澤園〜8:15 横尾〜9:15 本谷橋〜11:00 涸沢ヒュッテ
朝の5:30に上高地に着弾。直ぐに支度を済ませてバスターミナルを後にする。1年生のペースは頗る快調で、2人の新人合宿からの成長を感じる。途中、徳澤園にご挨拶に立ち寄りつつ、2時間半で横尾に到着。ここから涸沢まで雪のない快適な上り道。ヒュッテ手前で30匹程のニホンザルのパーティーとすれ違い互いにエールを交わす。コースタイムより早いペースでお昼前に涸沢ヒュッテへの荷上げを完了した。テント設営も炊事も問題なく遂げる。涸沢から見える北穂高岳東陵のスカイラインを眺めながら、明日の行程を頭の中でイメージ。18時頃就寝した。
9月6日
気温7℃、天気:晴れ
2:30起床〜3:30出発〜4:15南稜と東稜の分岐〜4:40行動再開〜5:30 稜線〜5:55 ゴジラの背〜8:00 山頂〜8:20下山開始〜9:30滝谷懸垂点確認〜10:30南稜分岐〜12:00 帰幕〜17:30就寝
1時間で準備を済ませて、ベースキャンプを出発する。涸沢小屋の傍から南陵へと続く登山道を辿り、予定より15分程早く小さなケルンが目印の東陵への分岐に着いた。各々防寒具を着て待機し、ヘッドライトを消せる程に明るくなった所で、ガレ場のトラバースを開始した。浮石に気をつけながら右手のコルを目指し、40分で稜線上に上がる。東の空には朝日が丁度昇る頃だった。休憩を取ったのち、稜線の北側にルートを取りながら歩みを進めて、頃合いを見て稜線上に復帰。少し先のゴジラの背手前でロープを出す準備をする。田中が50mのFIXロープをピナクルや残置ハーケンに視点を取りながら張り、全員危なげなく通過。終了点先のコルへは20mの懸垂下降。
そこから稜線上を辿り、大岩が重なる上部を越えて、8時前に北穂高小屋のテラスに出た。小屋で滝谷に関する情報収集をした後に、目と鼻の先の山頂にて記念撮影。そこから、真道と小池以外は南稜を涸沢へと下った。2人は滝谷のアプローチを偵察。ドームの頭を涸沢側に巻き、涸沢岳へと向かう稜線の最初の鎖場を下った所の、第3尾根南側のガリーにかすかに残る踏み跡を辿っていく。浮石などが多く、スタンスも悪いので慎重に下る。記録の写真を頼りに、迷いながらもなんとか下降点を発見。アプローチ路を記憶しながら元来た道を戻り、北穂高のキャンプ場の様子を確認しつつ、TSへと帰った。
9月7日
気温7℃ 天気:快晴
2:30起床〜3:30出発〜5: 00Ⅴ•Ⅵのコル〜6:10 Ⅳ峰の頭〜6:25Ⅲ•Ⅳのコル〜6:55Ⅲ峰取り付き〜10:00前穂高岳山頂〜10:20出発〜12:15奥穂高岳〜13:52 ザイテングラート〜14:30 TS〜17:30就寝
暗闇の中、コルへと続くガレ場を登る。踏み跡になっていて岩も安定しており比較的歩きやすい。辺りが明るくなり始める頃にコルへと到着。日の出を待つ間に5峰のルーファイ。5時きっかりに出発した。5峰はそこまで難しい部分はなく基本踏み跡を歩く。穂高連峰の最前衛、前穂の稜線上はモルゲンロートで赤く燃え上がる。続く4峰も難しくはないが、確実なルートファインディングと浮石や脆いホールドに警戒しながらの登高が求められた。Ⅲ•Ⅳのコルに到着。早速先発の田中パーティーは準備を始める。1年生は登山靴からクライミングシューズに履き替えた。コルから少し上がった位置のテラスに支点を構築。稜線を奥又白側に巻きながら1ピッチ目を伸ばした。2ピッチ目終了点でⅢ峰チムニーの手前に着き、3ピッチ目はチムニー右手のルンゼを上がった。ルートファインディングを誤らなければ登山靴で十分登れるレベルの難易度感。結局5ピッチでⅢ峰頭に出て、Ⅱ峰頭からは7mの懸垂下降。そこからまもなく本峰に登頂。前穂からは一般ルートを縦走。岩波が昨日より膝の痛みを訴えていたが、行動中の様子を見る限り問題はなさそうだ。1年生も岩場の下りなどスムーズに通過ができるように成長している。昼過ぎに帰幕した。
9月8日
気温:9℃ 天気:雨
下山隊:2:00起床〜3:15出発〜7:10上高地
真道・小池:3:00起床〜4:30 出発〜6:30 北穂高テントサイト〜18:00就寝
下山隊を見送った後、残留組は日の出前に霧雨の中涸沢を出発した。2時間ほどでテントサイトに着く。稜線から外れて大岩の影になっている場所を幕営ポイントに設定した。手早くテントを張り、風邪を避けられるように小石を積んで壁を築いた。幕営と個装整理を済ませて、往復30分の小屋に幕営料の支払いと水汲みに向かう。テント宿泊者は無料で水を汲み放題ということでありがたい。行動予定を書き込むノートを見ると、昨日北穂高岳からの下り途中に遭遇した某大学の山岳部は、滝谷を登攀した後、本日この雨の中大キレットを越えて槍ヶ岳を登りに行ったよう。下山のことしか頭にない我々もこの意識を是非とも見習いたいところだ。11頃から雨が次第に強くなる。午後に雨風のピークを迎え、浸水でテント内の水位も上がってきた。サーマルマットの縁を曲げ、この上だけは浸水しないように防衛線を張り、シュラフと防寒着だけは濡れないように死守した。
9月9日
気温:10℃ 天気:雨
3:00起床〜停滞〜18:00就寝
3時に起床したが雨はまだ降っていた。朝食を食べ、雨が止むのを待つ。9時ごろ雨が止むが雲が晴れないので、岩のコンディションを考え、本日は停滞として、登攀は明日決行することとした。10時に装備を外に広げ物乾を試みる。12時ごろになると晴れ間が出てきて、穂高連峰を一望できる圧巻のマウンテンビューが徐々に広がる。日差しも暑くなってきた。先日我々がまたがっていた北穂のゴジラも目の前で気持ち良さそうに日向ぼっこをしていた。
9月10日
気温:7度 天気:快晴
4:00起床〜5:00 出発〜6:00 登攀開始〜9:10 ドーム頭〜10:30撤収〜12:00 涸沢〜16:30上高地BT=下山
明るくなってから出発し、偵察時の記憶を頼りに迷うことなく懸垂点に到着。25mの懸垂下降を行い、踏み跡を頼りに登ってゆくとまもなく取り付きに到着した。日はまだ当たっていなかったが、風はなく毛下着やミッドレイヤーなどを着用したおかげでそこまで寒くはなかった。1ピッチ目のルンゼ〜チムニーを小池リードで登る。チムニー手前でザックをハーネスのビレイループにぶら下げ、チムニーはチョックストーンを左側から越えていく。2ピッチ目は上部スラブからの乗越が悪かった。その後3ピッチ目は緩やかなリッジをコンテ歩行で時間短縮を図り、4,5ピッチ目を難なく越えて、取り付きから3時間でドームの頭直下に出た。ロープをたたみ、縦走路に向けてクライムダウン。テントサイトに帰幕後、手早く撤収作業を終えて、北穂高岳南陵を下った。上高地までの下山途中、徳沢園でご挨拶に立ち寄った。松本へのバスの最終便出発前にBTに到着し下山した。
登攀感想(小池):1P目 チムニーのコツは中に入り過ぎないこと。そのことを頭に入れていたが結局ザックを挟まらせてチムニー内でもがく羽目に。何とか突破し、チョックストーンを左から越しビレイ点へ。2P目 ここがしんどかった気がする。スラブ後の左のハング帯を登るのがフォローでも体力を使わされた。直上の方が楽だったかもしれない。3P目 コンテ。2P目終了点から台形の岩が見える。4p目 凹角から登りスラブに入り、一度左のクラックにトラバースしてから右に移った。右に移るとき、若干怖さを感じるが右のカンテがガバ。その後のチムニーは、足を左右に張り出し乗越していく。5p目 ドームの頭を登る。凹角からスタートで最後右からテラスに出るときにクラックにジャムをした気がする。テラスは日が当たり、雲一つない穂高連峰が迎えてくれた。
今年の2月に槍ヶ岳を登った際に、右俣林道からみた滝谷ドームの頭、威圧感を感じると共に登攀対象として惹かれた。無雪期に登る計画を立て今回、前穂高北尾根・北穂高東稜と同時に登ることができた。ネットからの情報などを得るのではなく、実際に自分で見て魅力を感じた場所を登る。登山の醍醐味であり、そのようなクライミングをこれからもしていきたい。今度は下部から、または冬に訪れようか。
5. 総括:
夏山合宿の定着パートの補填ということで、バリエーションルートの登攀を中心とした山行内容であったが、1年生は的確にロープワークをこなし、両ルート共に安定した登攀で、初めてのアルパインクライミングとして十分な成果を上げられたように思う。1年生は今回の山行を通じて、整備された登山道ではなく、道なき道を切り開きながら進む山岳部らしい登山というものを身をもって体験できたのではないだろうか。前穂高岳北尾根は日本を代表するアルパインの名ルートだが、ここはまだ入門編。無雪期のアルパインルートだけでも、もっと難しくて面白いルートは日本中に数多ある。もっともっと山にのめり込み、自分の登山スタイルや目標とするルートを見つけるきっかけに今回の山行がなってくれることを願っている。
まだ無雪期シーズンは続くが、沢登りやフリークライミング、アルパインクライミングを通じて1年生ならびに隊全体の経験値を上げながら、同時に、11月末頃から始まる積雪シーズンに向けて、ロープワークだけでなく雪上での登攀や生活技術、そして厳しい環境を耐え抜く体力をさらに養っていく。
(文責:主将 真道)
Leave a Reply