3/29‐31 八ヶ岳登攀山行
1.対象:八ヶ岳 阿弥陀岳北西稜 中山尾根
2.日程:2021年3月29日~3月31日
3.参加メンバー:真道(3年CL)、小池(2年)、田中(2年)
4.概要:
3/29 6:00八ヶ岳山荘~7:00美濃戸山荘~8:45北西稜アプローチ偵察~11:15行者小屋TS~12:00アイスキャンディー~13:30行者小屋TS 気温5度
前日に八ヶ岳山荘の仮眠室で1泊、家のベットのような寝心地で快適な睡眠を取ることが出来た。行者小屋までのアプローチは南沢経由で行く。南沢は前日に軽く雨が降った影響か地面は凍結しておりツルツル滑るので、ここからアイゼンを履いた。行者小屋に向かう途中で、荷物をデポし明日の阿弥陀岳北西稜のアプローチの偵察を行う。記録などを参考に樹林帯を進むと、トレースを発見。しばらく尾根を歩き、ラッセルの必要などが無いことを確認する。その後、行者小屋でテントを張り、アイスの練習も予定していたのでアイスキャンディーに向かう。しかし、赤岳鉱泉で利用料を払おうとすると、残念な返事が返ってくる。アイスキャンディーは昨日で営業を終了してしまったのこと。わざわざ持ってきたシングルロープ等が只の重りになった瞬間であった。確かにアイスキャンディーの氷も大分解け、一部大穴も空いており登るのは厳しそうな箇所もあった。ふと、後ろを振り向くと1月にシーズン券を購入していた真道さんが残念そうな表情をしていた。
気を取り直して明日の北西稜に備え、テントでくつろぎ早めの就寝。
3/30 3:45起床~5:00行者小屋TS出発~5:15北西稜アプローチの樹林帯~5:45露岩~6:10小ピーク~7:00第一岩壁基部~9:15第二岩壁基部~10:45阿弥陀岳山頂~11:40行者小屋TS 気温0度
5:00行動開始、テントを出ると暖かく、空には雲一つ無くピーカン。雪質はまだ日が出てきていなかったの締まっており、アイゼンの刺さりも良かった。5:15に樹林帯に入る、前日のトレースを追い目印の露岩を見つける。ここから少し急になり30分程歩くと小ピークに辿り着く。第一岩壁を見上げると、「ここを登るのかあ」と少したじろぐが、右に回りこんで登るから大丈夫と言い聞かせて進む。第一岩壁までのリッジは念の為コンテにする、途中雪が少ないためか岩が露出しており登り辛い所もあったが、ロープを出していたのが功を奏し危なげなく通過。
第一岩壁基部にはビレイ点があり、1P目(小池)は右に回りこんでスタートする。前半はランナーが豊富、後半は少々ランナウトしてしまうが問題ない、順調に進んで行くとロープ5メートルのコール、ハンガーボルトを1つ見つけたがカムなどを決める場所が無かったので左上の尖った岩にスリングを巻き付け支点にした。
2P目(小池)右の凹角に出てリッジに上がる、途中雪がぐずり始め中々アックスが決まらず時間がかかった。リッジに出ると安定したビレイ点を発見。
3P目(小池)ここで一度右に行くかか左に行くかで話し合いをし、左のバンドを選択。バンドはランナーが所々取れるが、足元は融雪が始まり崩れそうだったので怖かった。また、ホールドも脆く掴むとグラグラ揺れ、神経を使わされた。何とか、ビレイ点に辿り着き核心部へ。
4P目(小池)核心部は凹角とクラックの2つルートがとれる、我々は登りやすそうな凹角にトライした。出だしは右の小垂壁を登りバンドへ、トポの記載通り、そこにはガバフレークがありランナーが取れる。少し進むとピトンが連打された核心の凹角が出てくる、ここは完全にドライツーリング。マントルを返す所から始まり、クラックにアックスを引掛けて乗り上げる。引き続きクラックを使い登ると凹角の中間部辺りで右のカンテが使えるようになる。核心はここから、右のアックスと左足スメアで体を上げ、左上の岩の突起にアックスを掛けて登る。しかし、左のアックスが外れ落ちかけてしまう。体勢を立て直しもう一度トライしたが、危ないと判断し一度テンションを貰う。その後は大人しく残置ピトンにヌンチャクをかけてA0登攀。最後はリッジに馬乗りになるように上がった。一度息を整え、直ぐそこの終了点で田中・真道さんを迎える準備をする。田中・真道さんも右カンテを使う箇所で手こずっているようであったが、二人とも上手く乗り越えた。そして、最後の雪壁をコンテで登りウイニングクライミング、阿弥陀岳山頂へ。
山頂では、しばらく談笑したり、レーションを食べたりとくつろぐ。下りは雪崩の危険がない事を確認し中岳沢から下る、あっという間にTSへ。登攀具等を整理して、翌日の中山尾根へ備える。
3/31 3:45起床~5:00行者小屋TS出発~5:10中山乗越~5:50下部岩壁~7:002P目~7:403P目~10:00上部岩壁~12:50登山道合流~14:00行者小屋TS~16:30八ヶ岳山荘
中山乗越からはトレースが付いており、順調に高度を稼いで下部岩壁へ。ビレイ点にはボルトとハーケンがある。ここから登攀開始。
1p目(小池)、直登ルートは難しいとのことなので凹角のラインを登ることにした。凹角らしきものが右手に見え、バンドを大きくトラバースした。だが、これは間違い。実際は、直登ルートのすぐ裏側に凹角ラインがある。トラバースした先には、fixロープらしきものが上から垂れ下り、ベルグラが張った草付きがある。トポにはⅢ+とあったが、ありえないと思い右に一段上がれる所を登った。そこも残置など無く、辛うじてクラックにカムを取れる所がある程度だ。明らかにルートを間違え、田中・真道さんらの危ないなら行くなとの指摘を受けたので、引き返すことに、ここでカムを一つ残置する羽目になった。引き返す途中でビレイ点のすぐ裏側に凹角を発見。リードを真道さんに交代し、ランナーが乏しい1p目を突破。1p目で1時間ほどタイムロスしてしまう。
2p目(真道さん)左の草付きを登り、稜線上の灌木でビレー。直上の岩を巻くときは草付きにアックスを刺さないと登り辛かった。上部岩壁まではコンテで進む。
3p目(小池)先程の名誉挽回のため意気込んで核心部に行くが、左の凹角に行く所を右へ直登してしまった。一向にハングが見えないと疑問に思いながらも、ホールドを見つけるのに手間取り少し焦る。途中、ランナーが乏しくなりカムを決めながら登り、気がつくとハイマツ帯に出た。左手をみるとハングの出口が見える、ここで核心ハングをすっ飛ばして上がってきたのに気づく。ハイマツ帯の上にハーケンのビレイ点を見つけ支点構築。またやってしまった。真道さん、田中には申し訳ない気持ちで一杯であったが、落ち込んでいても仕方が無いので気持ちを切り替えて再開。後から、写真などを見返すと1ピン目のボルトから左に移り登れば良かったようだ。
5p目、引き続きリードは小池で登る。このピッチは岩混じりの草付き、意外にもここが危なかった。雪が少ないこともあったが、ランナーが全く取れないため慎重に進む。ピナクル下に真新しいハンガーボルトが見えたがロープが足りなさそうなので、一段下の突起した岩でビレー。
6p目(小池)、ここで一度自分達がどこにいるのか話し合い、ピナクル直上か右トラバースかという議論になった。トポを一応確認するがイマイチ位置を特定出来ず、右にトラバースしてみる。だがピナクル裏はランナーが皆無で、岩も脆い、ここではない事を確認。引き返し、ハンガーで支点を作る。やはり、直上が正規ルートのようであるので、ランナーは無かったがピナクル上部へ。上はリッジになっており、しばらく進むと裏側にビレイ点を発見。そして、バンドと登山道を確認出来た。
7P目(小池)、最後のバンドは雪が崩れそうであったので、スタカットで登山道に出る(残置ピトンがある)。これで一安心、かなり時間をかけてしまった。一息ついた後、本日下山なのでそそくさと地蔵尾根から下る。
TSから一度赤岳鉱泉に出て、北沢経由で八ヶ岳山荘へ。毎度の事だが、行者小屋から八ヶ岳山荘までの道のりは長く疲れる。これにて行動終了。
総括:
八ヶ岳でのアルパインは1月の石尊稜ぶりで、次は中山尾根・阿弥陀北西稜と意気込んでいた。なんだかんだで春山合宿等の準備に追われて結局は3月末の雪の少ない時期に行くことになってしまった。
阿弥陀岳北西稜に関しては、核心部をフリーで行けなかったのが悔やまれるが、それ以外はスムーズに登攀にできたと思っている。次は厳冬期に登りに来たいと思う。
それと比べて、中山尾根は反省点の多い登攀であった。一番の反省点は、事前の下調べを怠っていた点だ。下界でもっと中山尾根について調べていれば、1p目のようなカムを残置をする羽目にはならなかっただろう。そして、小池のルートファイディングにミスがあった。残置のビトン、ボルトを頼りに登っている節があり、岩のラインを見極める力が不足していると感じた。これはアルパインの経験値を上げていくしかないと思う。来年度までには力を付け、こちらも厳冬期にリベンジしに行きたい。
文責 小池
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