2020年度 冬山合宿
1.対象:北アルプス 白馬岳
2.日程:2020年12月25日~12月30日
3.参加メンバー:小野(4年CL)、浅川(5年)、真道(3年)、田代(3年)、小池(2年)、田中(2年)
4.概要:
12月25日
17:00部室集合〜24:20東京駅バス乗車
17時に部室に集合し、団装の振り分けを行う。兼用靴と冬用登山靴の2足を持参する部員が多かったこともあり、かなりの大荷物となる。
12月26日
気温:-6℃ 天気:雪 前日の積雪:50cm
6:30スキー場着〜8:45滑走開始〜9:30ヒュッテ着〜10:00スキー場着〜11:00昼食〜14:45練習終了〜15:30ヒュッテ着〜18:00夕食
予定より早い6:30にスキー場に到着した。到着時は雪が降っており、前日に麓で20cm、上部で50cmほどの積雪があったようである。ゴンドラに終点まで乗車し、ゴンドラ駅外に荷物をデポする。鍵が合わずヒュッテに入ることができなかった昨年の教訓から、小野と田代の2名が小屋開けにヒュッテに向かった。林道は圧雪されておらず、また我々が一番乗りであったことから、ラッセルをしながら進むこととなった。スキーを履いた状態で30cmほど沈むラッセルをしながらヒュッテに向かう。ヒュッテ到着後、鍵が開くことを確認し滑って下山した。小屋開けに向かった2名以外は荷物をデポ後、福田コーチ、鈴木健斗OBと合流し早速スキー訓練に移った。小池と田中の両名は今回から兼用靴を導入しており、昨年と比べ見違えるほど上達していた。ゴンドラ中間駅のレストランで昼食を取る。混雑を避けるため11時に集合したが、すでに混み始めていた。素早く昼食を取り、練習に戻る。他の部員を待つ時間がほとんどなく、リフト乗車が休憩といったペースで時間いっぱい滑り込むことができた。デポした荷物を回収した後、林道の末端でビーコンチェックを行い、鵯峰の雪崩を警戒しながらヒュッテに向かう。ヒュッテ入室前には消毒液を使い、手が触れる場所は消毒を行った。ヒュッテは給湯器が故障しており、女子トイレの大便器以外は凍結している状況であったが、使用に問題はなかった。18時に食事を取り、各自就寝。
12月27日
気温:-6℃ 天気:快晴 前日の積雪:0cm
6:00起床〜7:30出発〜8:00ゴンドラ乗り場着〜8:30滑走開始〜10:30食事〜13:30練習終了〜14:00ヒュッテ着〜16:00ビーコン捜索訓練終了
6時に起床し、7:30にヒュッテを発つ。積雪はなく昨日のトレースがそのまま残っていたため、林道で苦労することもなくスキー場下部まで滑り降りることができた。下部ゴンドラ駅で山賀コーチと合流し、スキー訓練に移る。ゴンドラ中間駅と最上部のリフトの間の区間を繰り返し滑り、田中と小池のさらなる上達を感じる。圧雪されていない区間も多く残されていたが、そのような箇所でも問題なく滑ることができていた。今合宿のように上級生のみの場合、スキー場での訓練は1日でも良いと感じた。13:30に福田コーチ、鈴木健斗OBと別れスキー訓練を終了した。ヒュッテ到着後、神の田圃にて山賀コーチのご指導の下、ビーコン捜索訓練を行った。捜索訓練ではファインサーチの正確さ、プロービングの方法についてご指摘を受け、改善しながら訓練を繰り返し行った。新雪期合宿では雪不足から行えなかった掘り出し訓練も、神の田圃で行うことができた。最終的には、要救助者の掘り出しを組み合わせた実践に近い要領で訓練を行うことができ、大きな成果を得ることができたと感じる。
12月28日
気温:-6℃ 天気:晴れ 前日の積雪:0cm
7:00 起床〜10:20真道合流〜10:50ヒュッテ発〜13:20天狗原幕営地〜15:00幕営完了
7時に起床し、本日入山の真道の到着を待つ。本来であれば天狗原を往復する予定であったが、30日以降大寒波が予想されることから、翌日29日を白馬岳アタック日に設定し本日テントを天狗原にあげることとした。翌日中にヒュッテまで下山することとし、山頂のリミットを10:30とする方針を決定した。田代、小池が林道の末端まで真道を迎えに行き、3人でヒュッテに上がってきた。
真道の荷物整理を待ち、10:50にヒュッテを出発した。林道はトレースが付いており、順調に進む。成城学園小屋で山賀コーチとお別れし、尾根伝いに天狗原を目指す。こちらもトレースがあり問題なく幕営地に到着した。幕営地は昨年と同じく天狗原から一段下がった場所とする。停滞の場合を考慮し、念入りに雪を掘り、6〜7人用テント2張りを設営した。コロナ対策で大型テント2張りを張る必要があり、設営にも通常以上の時間と労力を要した。簡単なミーティングを行い就寝する。
12月29日
気温:-8℃ 天気:晴れ 前日の積雪:0cm
3:15 起床〜4:30 出発〜7:00 船越の頭〜8:15 小蓮華岳〜10:00 白馬岳〜12:45 船越の頭〜14:00白馬乗鞍岳〜14:15テントサイト〜15:15テントサイト発〜17:00林道〜17:30ヒュッテ
3:15に起床し、4:30に出発する。テントを出ると、満月に近い月明かりに照らされ、白馬乗鞍岳のシルエットがはっきりと見える快晴の夜であった。ビーコンチェックを済ませ、行動を開始する。雪面に積雪はなく前日3日間でしっかりとしまった雪となっていた。白馬乗鞍岳へ登る夏道上を辿り山頂へ向かった。上部岩稜帯を巻く箇所で浅川のスキーが外れる。検証するとビンディングのネジが一つ飛んでおり、ビンディングが固定できない状態となっていた。修理具のドライバーで修理を試みるが応急修理は無理だと判断し、浅川のみ帰幕することとなった。近年の合宿ではスキートラブルで行動が妨げられることも多くなり、装備の老朽化が顕著になっていると感じる。プラブーツを装着可能なビンディングはすでに販売されておらず、現在の合宿形態を続ける場合、代替可能な装備の検討を始める必要があると感じる。午後天候が崩れる可能性を考慮し、白馬乗鞍岳の稜線に赤旗を立てながら進む。昨年は山頂手前でスキーをデポしたが、今年はリミットを早く設定したことと、スキー技術が昨年より優れていることから、船越の頭直下までスキーで進みスキーをデポした。白馬乗鞍岳山頂から船越の頭の間のコルへ降りる際は一時的にワカンに履き替え進んだ。船越の頭から先は山頂までアイゼンで歩くことができた。
昨年より雪は多いが、ツボ足で20cm沈む状況であり問題なく進む。小蓮華岳直下で風が強くなり雪煙に巻かれることも多くなった。山頂を通過した地点で休憩を取り、全員ゴーグルを装着する。その後は休憩をとることなく、山頂を目指した。風は北北西から吹いており向かい風となる。所々風に煽られながらも、小池を先頭に素早く行動することができた。山頂直下の岩稜地帯も雪が付き、歩きやすくなっていた。10時には山頂に立つことができ、写真撮影の後すぐに下山を開始した。風は追い風となり、影響を感じることは少なくなった。田代が少し遅れ始めるが、フォローし合いながら下山する。小蓮華岳周辺で風が強い箇所があり、雪煙に巻かれる。この時点で白馬岳山頂を振り返ると雪煙が立っており、風が強まってきていることを実感する。スキーデポを回収し、船越の頭から滑り降りる。歩きで遅れていた田代も問題なく行動できていた。コルからは再びワカンを装着し、赤旗を回収しながら白馬乗鞍岳東面の斜面まで移動した。斜面を滑降し幕営地を目指すが、小池は昨年の教訓からスキーではなくスノーシューでの下山を選択した。結果、小池のほうが先行する場面も見られ、スキーの機動力を活かすには全員が同様の技術レベル・装備を有している必要があると認識することとなった。幕営地で浅川と合流した後撤収。全装での下山はさらに難しく、兼用靴に履き替えても苦戦していた。途中からワカンに履き替えるものもあり、ここでもスキーの性能を活かしきることができなかったと感じた。日没前には林道に出ることができ、圧雪された林道をヒュッテまで滑り降りることができた。予報ではすでに雪が振り始めるはずであったが、上空に雲は少なく降雪までは少しの猶予がありそうであった。ヒュッテで夕食をとり就寝した。
12月30日
気温:-8℃ 天気:雪 前日の積雪:20cm
6:45起床〜8:40出発〜10:00下部ゴンドラ乗り場〜11:20白馬駅
起床すると雪が降っており、少し積雪があったようである。しかしながら、予想していた本降りの雪ではなく穏やかな降雪であった。朝食を取り、小屋閉めを行い下山する。ゲレンデでは他のスキーヤーと衝突しないよう速度を落としながら滑り降りた。スキー場下部では雪が雨に変わった。タクシーで白馬駅に移動し解散した。
総括
上級生のみとなった合宿であったためか、全体的にスムーズに進んだ合宿であった。昨年と同じ行程をほぼ同じメンバーで行ったことでより成長を感じることができる場面も多くあった。装備や出発時刻など下級生から進言があることもあり、全体的な視点で行動できるようになったと感じる。スキー技術など個人差がある点もあったが、追加の訓練でカバーできる範囲であり、白馬で学んだ技術を別の山行や合宿などに積極的に応用していく段階であると考えている。
しかし、個人装備の確認不足があるなど小さなミスも気になった。改めて初心に帰り、小さなミスが大きな失敗として顕在化する前に修正していく必要性を再確認した。実力が伸びる部分がある陰で疎かになっている点がないか、個人として、チームとして再確認していく必要がある。
おまけ(装備レポート)
製品名: Arcteryx procline
防寒性: 問題なし
歩行性:快適
今回はスキー、アタックともに兼用靴+TLTビンディングの組み合わせで実施した。使用した製品が、軽量性・可動域を重視し、アルパインクライミングにも対応できるよう設計された製品であり白馬アタックまで含めて使用に問題はなかった。
懸念していた防寒性についても問題はなく、薄手の靴下一枚だけで寒さを感じることはなかった。長距離の稜線歩きについても、プラブーツと比較して何ら遜色ない歩きやすさであった。バックル固定のスキー靴らしく、履く脱ぐといった動作も素早く行える点は良かった。
また、履き口の構造がゲイター一体型登山靴と同様にゴムで絞れるようになっているため、スパッツを使用せずとも雪が靴の中に侵入することはなかった。現在主流となっているゲイター一体型のヤッケと組み合わせれば、問題なく深雪でのラッセルもこなせると思う。より滑走性が求められるバックカントリーでは、従来のスキーブーツに劣るかもしれないが、山岳部的な用途では滑走においても素晴らしい性能を発揮していた。
今後山岳部で兼用靴の導入を考える場合、
・軽量性
・可動域の広さ
の2点を重視した靴選びが望ましいと考えられる。兼用履の中でも設計において重視する性能に幅があるため、プラブーツの用途をそのまま置き換えることができるモデルが部活動では使いやすいのではないかと感じた。
文責 小野
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