滝谷、第四尾根主稜とドーム中央稜の登攀
1.対象:滝谷、第四尾根主稜とドーム中央稜
2.日程:10/18~20
3.メンバー:田中(4年)、鈴木雄大(4年)
4.概要:
ギア:キャメロット#0.4〜3 1セット、ナッツ1セット、ハーケン(未使用)。キャメロットは1式あると所々で使え、有効だった。ナッツは一度だけ使用した。
10/18 6:30上高地〜7:30徳沢〜10:30本谷橋〜12:20涸沢~15:30北穂南陵テント場
前日に雨が降ったようだが、すっきりと晴れた中、滝谷へとアプローチを始めた。今月末まで犬塚さんが徳澤園で働いているというので、いつもより軽い足取りで、徳沢まで。徳沢園の手前800mほどの所で犬塚さんが現れ、一緒に話をしながら歩いた。今日は小屋での勤務はお休みのようだった。徳沢園では、眠気覚ましのコーヒーと極上のソフトクリームをご馳走していただいた。
その後も、横尾を過ぎたあたりまで一緒に歩き、お別れ。北穂南陵テント場までは単調な登山道をひたすら歩き、15時半頃到着。ここのテント場は水場が北穂高山頂直下の小屋にしかないため、毎回15分ほど登らないといけない。今日は二人とも登る気にならず、残りの水でなんとか一夜を過ごし、明日の朝水を汲んでから滝谷へ出発することにした。
10/19 3:30起床〜4:20北穂南陵テント場〜5:00松濤のコル〜6:10C沢右俣左俣合流点〜6:30第四尾根末端付近の顕著なコル、クライミング開始〜13:00〜7p目終了後の懸垂点〜16:00終了点〜16:45北穂南陵テント場
初めてのクライミングエリアでは取り付きに正しくアプローチすることが第一の核心だ。今回もそれは例外ではなく、松濤岩の手前のちょっとした踏み跡を頼りにガレガレの沢を下っていく。ここはガレ具合が半端なく、平日以外は絶対に行かないほうがいい。
半信半疑のままC沢の左俣のガレた沢と格闘すること1時間、右俣との合流する地点へ着いた。すると、トポに書いてある通りの顕著な100m程の踏み跡が第四尾根のスノーコルへ向かって続いていた。それを辿ると4尾根上のコルへと着き、一安心。結局無駄な道を歩かず、取り付きへと辿り着いた。ここからロープを出すことに。
[スノーコルだと思っていたところ、おそらくこれはトポ上の”小コル”か]
1ピッチ目、草付き混じりの岩。Ⅱ級程か。登っていると通常このようなルートにあるはずのピトンが1つもなく、不安になる。ロープを50m近くのばすと普通に歩けそうな踏み跡に合流する。2ピッチ目はコンテでそこを100m程進むと草も少なくなり、ピトンが現れ始めた。後でわかったことだが、ここがスノーコルで本来のクライミング開始地点らしい。
[トポ上の1ピッチ目を落石に気を使いながらリードする田中颯」
ただまだまだ浮石が多く、リードフォロー共に全く油断できない緊張したクライミングが続きそうだ。ジャルパインクライミング特有の岩を掴むのではなく押し付けながら登るテクニックを多用しながらロープを伸ばしていく。クライミングのムーブそれ自体は問題ないが、ホールドの不安定さが登る勇気を削ぎ落とすような箇所も度々出てくる。
ここまで来れば、稜線は明瞭で、ルートファインディングには困らず、7p目の終了点まで登ることができる。ここから25m強の懸垂をし、最後の2pを登ればクライミング終了だ。8p目はⅣ級のフェースからチムニーだ。最初のフェースは岩もそれなりに硬く、今までとは違った快適なクライミングを楽しめる。その後のチムニーは大きなザックを背負っていると登りにくく、ガッシャを持ってきていた田中は長い間挟まっていた。チムニーを登るときはスリングで体の下にザックを吊り下げると登りやすいと教え、次のピッチへ。
9p目、Ⅴ級だが最初の2mを登れば後は簡単な登り。終了点は滝谷に似合わない銀に輝くペツルのボルトだった。
終了点からはポロポロの踏み跡を辿れば稜線に合流した。
テント場に戻りながら明日のドーム中央稜への降り口を確認し、払いそびれていたテント代を払って水を汲み、カレーを食べて眠りについた。
10/20 起床4:00〜4:50北穂南陵テント場発〜6:00T1の懸垂点〜6:30ドーム中央稜登攀開始〜10:30終了点〜11:20北穂南陵テント場〜12:30涸沢〜15:30徳沢にてカレー〜17:00上高地
前日に多少取り付きへのルートをチェックしていたため、スムーズに取り付きへと向かうことができた。縦走路をペンキに従って歩くと、一箇所クサリ場の加工があるので、そこを降りてすぐ、右側の踏み跡を15分ほど下ると、やがてクライムダウンはできそうにないところに着いた。その辺で歩き回ると、しっかりとしたラペルリングが見つかった。
20m強の懸垂をするとトポ上にT2とあるテラスに着き、さらに歩くこと3分、顕著なチムニーで始まるドーム中央稜1ピッチ目へと到着した。
[ドーム中央稜取り付き]
昨日の反省を踏まえて今日はフォローのみがザックを背負うスタイルで来ていたので、1ピッチ目のチムニーは田中が難なくリードした。2ピッチ目はⅤ級のスラブでなかなか面白い。
ドーム中央稜は昨日の脆さとは比べ物にならないほど安定しており、楽しいクライミングに集中できた。ただ、10月も終わりに近づき、途中小さなツララもあるような極寒のコンディションだった。岩は冷たく、吹きやむことのない風がビレイヤーを震えさせる。3ピッチ目はⅠ級の歩きなのでコンテで進み、4ピッチ目へ。4級の凹角を田中がリードしていった。核心は、1センチほどのフットホールドの上で、大きなチョックストーンのガバを掴むところで、田中は一度足を滑らせ2m程フォール。だが、回収不能の残置カムがこれをキャッチしてくれた。フォール後は何とか気持ちを取り戻し、突破してくれた。
[乏しいフットホールドを信じながら、チョックストーンを離すまいとする田中颯]
後で、花谷さんと今井さんが冬にここを登る動画を見たが、彼らが登っていたのは右のクラックで、そっちの方が簡単だったのかもしれない。だがそこにはピトンなどが何もなかった気がするが。
最終5ピッチ目は鈴木がリード。最後の最後のハングを右から、ハンドクラックを使って越えるムーブが簡単ではなく、アルパインルートではしたことないようなハンドジャムをして突破した。終了点に出れば涸沢側からの光が眩しく、最高のロケーションだった。常に日陰の滝谷とは体感で5度以上は暖かかっただろう。
[ドーム中央稜最終ピッチの核心部のクラックに腕を突っ込もうとする田中颯]
ドームに突き上げる最高のクライミングを終え、充実した気分でテン場へ戻り、上高地へと歩みを進める。
[繊細なクライミングの後は大胆にパッキング]
[一緒に上高地方面へと歩く少し変わった別パーティー]
途中徳沢に再び立ち寄り、犬塚さんからカレーとソフトクリームというなんとも豪華なご馳走をしていただいた。結局この山行中3回カレーを食べることになったのだが、(田中に至っては下界から食べ続けていたらしいので、連続5回)徳沢園のカレーは本当に美味しく5分とかからず完食した。ソフトクリームも相変わらず最高だった。良い先輩に恵まれたなと実感する。
お腹を満たした後、上高地へとひたすら続く道を無心で歩き、無事に山行を終えた。
検討事項:
1、青いハーフロープの傷みが激しい。同じ種類の同じ色のものは末端に番号をつけるなどして差別化するべき。
文=鈴木 雄大
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